抄録
近年,Brain Machine Interface(BMI)や生体信号による外部機器の制御など,脳や生体を活用する基礎研究が活発に行われている.BMIでは,脳の可塑性や機能分散の構造特性を活かし外部機器を効率よく制御する.生体の神経回路網に関する研究では,培養神経回路網が可塑性によって発火スパイクを規則的に保持できることを示す.また,最近では,神経回路網における神経細胞間の時空間特性を解析し,脳内信号の同時発火性から初期視覚機能や初期聴覚機能を解明する研究が盛んに行われている.神経回路網での信号の流れを神経細胞間の発火スパイクの単なる連鎖と捉えるのではなく,その一連の連鎖の流れの方位性や連動性に注目して,種々の初期知覚現象が空間特性と時間特性によって表象されると考える.本論文では,培養神経回路網における神経細胞の発火スパイクの論理性と方位性,結合性の構造特性を議論し,その時間特性を議論する.ラット培養神経回路網における発火スパイクは64個の電極を備えた多電極計測装置(MED)により計測される.この分散培養皿に装備されている64個の電極から任意の3電極を選択し,t-norm演算子とt-conorm演算子からなるファジィ演算子を用いて,発火スパイクの論理性と方位性を推定する解析法を提案した.また,ファジィ包含度によって発火スパイクの伝播効率を定義し,電極間の結合性を議論した.さらに,伝搬,拡散,吸収の3種類の伝播パターンの方位性を用いて,発火スパイクの論理性と結合性の関係について議論した.ここでは,これらの議論から,ファジィ演算子が培養神経回路網の発火スパイクの論理性と方位性,結合性の解析に有用であることを示す.