脳から取り出した神経細胞を分散培養して回路網を自律的に再形成させ,これにセンサとアクチュエーターを備えたロボットの身体を付与して環境と相互作用するようにしたシステムを,ハイブリッド型のニューロロボットという.ロボットのみならず,電子機器と神経回路網・脳とを接続して,環境からの入力を電気刺激として神経回路網に入力し,神経回路網の応答を出力として取り出す神経-機械ハイブリッドシステムを構築し,動作原理の解明・入出力の最適化,ならびにこれらを用いた人工的な知性システムの実現を目指す融合的学問分野をニューロロボティクスという.知能の構築には物理的な身体を介して環境と相互作用するという「身体性」が必要であるという考え方は身体性認知科学と呼ばれるが,ニューロロボティクスで扱われる神経-機械ハイブリッドシステムは「身体性」の実験モデルであり,生体神経回路網が外界との相互作用によって受ける影響や入力に対する反応特性を解析するには適した系である.
ニューロロボティクスの分野では,身体性の機能として,生物型エージェントの,反射的・本能的でアプリオリな行動を感覚器と効果器との接続様式に埋め込んでいること,外界のオブジェクトの特徴を異なる感覚によって知覚される異なる複数の検出特徴に分割すること,外界からの入力に対応する行動の結果が感覚器から再帰的に入力されることを保障する(閉ループ相互作用),ということが重要視されている.特に閉ループ相互作用が情報処理システム(閉ループの構成要素)そのものを変更し(可塑的変化),その結果として外界の変化に適応した行動が生成されると考えられている.
まとめると,ニューロロボティクスとは,生きた神経回路網に身体性を付与して,体を持った「小さな脳」のモデルを構成し,身体性認知科学の概念を生体の部品を用いて実証しようと言う試みである.専門学術誌として“Frontiers in Neurorobotics”が挙げられる.