2017 年 29 巻 4 号 p. 619-627
本論文は,介護老人福祉施設に設置したセンサ,および介護スタッフに装着してもらったセンサから取得したログを分析し,介護スタッフの作業推定や高齢者の睡眠状態分析を行った結果について示し,センサの設置場所など様々な制約のある実環境において,現状で入手が容易なセンサの有効な活用方法,および分析可能な結果について明らかにする.現在の日本は高齢化率が26%の超高齢化社会に突入し,介護や見守りの必要がある高齢者が増加している.このため,プライバシーやQOLを維持しつつ効率的に見守りなどの支援をするために,センサや人工知能などの情報通信技術の活用が期待されている.本論文では,介護老人福祉施設を対象とし,ビーコンや加速度センサ,睡眠センサといった,現状において入手が容易なセンサを利用し,介護スタッフの作業推定,および入居者の睡眠状態推定に取り組む.作業推定では,食事ケアやおやつ,レクリエーションといった定例作業を対象として,これをセンサログから推定することを試みる.睡眠状態推定では,睡眠計により取得したデータから,睡眠状態(浅い睡眠,深い睡眠,REM睡眠,覚醒)の割合を分析する.同様の傾向を持ついくつかのグループに分類し,その傾向について考察する.また,日中におけるレクリエーション活動と睡眠状態の関係についても取得したデータに基づき考察する.