日本口腔インプラント学会誌
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原著
ホタテガイ由来炭酸カルシウム・サケコラーゲン複合体による骨増生に関する研究
新井田 淳広瀬 由紀人赤木 誉王 宝禮越智 守生
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2012 年 25 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

骨増生の研究は,バイオエンジニアリングと再生医工学において,骨欠損を修復させることからインプラント治療にとって非常に重要である.従来から,ハイドロキシアパタイト,β-TCP または炭酸アパタイトを用い,コラーゲンまたはゼラチンで製作した複合体による骨形成の研究は行われている.しかしながら,炭酸カルシウムを用いる研究は少ない.われわれは,北海道において十分に活用されていない資源であるホタテガイの貝殻の炭酸カルシウム(CCSS)と,サケコラーゲン(SAC)によって作られた複合体の骨増生材料として研究を行った.
ウシコラーゲンとSAC は電子顕微鏡によって,形態的な比較を行った.SAC 単体とSAC+CCSS 複合体は,一晩凍結乾燥された.それらの比率は1.4 mL のSAC に0 g または0.014 g のCCSS が含まれた.SACと0.014 g CCSS 含有のSAC 複合体は,4週間の雄ウイスター・ラットの頭頂骨に埋入し2週間後,頭頂骨は複合体とともに摘出され,ヘマトキシリン・エオジン染色法とアザン・マロリー染色法で染色した.
SAC 構造はウシのものと同様に観察された.しかし,SAC コラーゲン線維はウシのものより多孔性であった.組織学的標本では,新生骨様形態がそれぞれの実験群で確認された.新生骨様形態は対照群には観察されなかった.0.014 g CCSS 含有の複合体は,SAC単独と比較して新生骨様形態が多かった.また,実験群と対照群には骨膜の肥厚が観察された.
本研究は,スペースが骨形成のために保たれるならSAC とCCSS によって新生骨様形態を確認することができた.さらに,本研究は産業廃棄物を研究に用いるという新しい試みである.

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© 2012 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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