2014 年 27 巻 1 号 p. 4-9
広範囲顎骨支持型装置が保険適応になったことによる医療者側の認識の展望を考察する.当科における7 年間の下顎区域切除66 症例を評価して推察したところ,広範囲顎骨支持型装置の適応症例数は年間人口10 万対1 例であり,実際に広範囲顎骨支持型装置を埋入したのはその1/3 であった.広範囲顎骨支持型装置から期待される効果からすると,これは少ないと考えるべきであり,増やすためには患者の立場で問題をとらえる必要がある.当科で広範囲顎骨支持型装置を埋入した患者を考察すると,義歯を常用でき,埋入までの修正手術が少ない状態で再建されていることが分かった.保険適応になっても患者のニーズ自体に変化はないが,社会のニーズは大きくなっている.今後の方向性としては,より補綴のしやすい顎堤再建を行い,再建と同時の即時埋入も視野に入れて,補綴完了までの患者の負担を小さくすることを目標とすべきである.