2019 年 32 巻 3 号 p. 168-179
超高齢社会を迎え,少数のインプラントで高い治療効果があり,メインテナンスに有利なインプラントオーバーデンチャー(以下IOD)が注目されている.しかし,IODといってもひとまとめに語ることは難しく,IODを選択する目的,インプラントの本数,使用するアタッチメントにより,その設計の考え方は全く異なってくる.そこで,IODの有用性を示した上で,このことを整理して設計の考え方と注意点を述べる.
IODは一般的にインプラント支持様式,インプラント粘膜支持様式,粘膜支持様式に分類されるが,臨床的には動きのないリジッドIODと動きのあるフレキシブルIODの大きく2つに分けられる.すなわち,総義歯の安定機能の1つである両側性バランスを利用するかどうかで,IODの設計の考え方が著しく変わってくる.施行にあたっての特に注意する点としては,免荷期間中にインプラント体に負荷を与えないことなどが挙げられる.
IOD選択の目的として,要介護を見据えたインプラント治療として高い有用性があることもあげられ,IODへの設計変更必要度レベル評価を提示する.加えて,歯科補綴のパラダイムシフトを引き起こそうとしている口腔スキャナーや3Dプリンターの使用によるIOD製作やコピーデンチャー製作についても示す.IODのさらなる普及が期待される.