日本口腔腫瘍学会誌
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シンポジウム1:「舌癌切除後の再建法を再考する─切除範囲に応じた機能回復をどう考えるか─」
舌癌切除後の再建法(原著)
―拡大切除後の再建を中心に―
上田 倫弘山下 徹郎林 信高後 友之細川 周一新山 宗佐藤 麻衣子
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2015 年 27 巻 4 号 p. 95-102

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抄録

口腔癌治療では,他領域の癌と同様に,生存率の向上はもっとも重要な問題であるが,治療後の口腔機能も重大な問題である。特に舌拡大切除後は,摂食,発語に大きく関わり,再建手術に工夫が要求される。2008年から2013年の間に当科で舌癌にて切除後,遊離皮弁による再建術を施行した61例の術後機能を評価した。口腔癌取扱い規約による舌切除の分類では,舌部分切除7例,舌可動部半切10例,舌可動部(亜)全摘7例,舌半切16例,舌(亜)全摘21例であった。皮弁の選択は切除範囲,個々の体格によって選択しているが,2/3以上の切除例では,筋皮弁を用い筋体を口蓋外側からオトガイに縫合し,筋体の萎縮防止のため,運動枝と舌下神経の吻合を付加,舌骨甲状軟骨の挙上術も同等に行っている。舌半切16例中,口腔機能評価が可能であったのは15例で,この内,13例(86.7%)の口腔機能は良好であった。一方,舌(亜)全摘症例の評価が可能であった20例では,機能良好は9例(18%)であった。口腔機能良好群と不良群に分類し,皮弁の種類(筋皮弁使用の有無),舌切除量(2/3を越えるか),舌骨上筋の残存の有無,舌骨甲状軟骨の吊り上げについてMann-Whitney U testによる検定を行った。筋皮弁使用の有無,舌骨甲状軟骨の吊り上げでは有意差はなく,舌切除量2/3以上の症例(P=0.028),舌骨上筋群の残存がない症例(P=0.032)では有意に口腔機能は不良であった。今後舌2/3以上の切除例や舌骨上筋の連続離断症例では,欠損に対する量的な再建だけではなく,さらなる工夫を行うことにより良好な機能の回復が期待される。

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© 2015 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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