日本口腔腫瘍学会誌
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最新号
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指針
原著
  • 吉澤 邦夫, 朱 臻陽, 王 振飛, 石山 敦也, 諸井 明徳, 上木 耕一郎
    2025 年37 巻3 号 p. 83-93
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/22
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌の治療法と予後を判定するために,客観性のある病理組織学的判定は非常に大切である。しかし,臨床現場では慢性的な病理医数の不足や診断者間での不一致が生じることなどの問題も山積しており,機械学習を利用した病理診断支援アルゴリズムの開発に大きな期待が寄せられる。
    正常な口腔扁平上皮の組織学的特徴として存在する細胞間橋は,扁平上皮癌においては分化度が低くなるにつれて消失していくことが知られている。しかし,その構造物は狭小であり,病理医が組織標本全体から隈なく区別化して評価することは困難である。
    そこで,われわれは口腔扁平上皮癌における細胞間橋の病理組織学的評価を行い,さらに客観的な指標とするために,機械学習を用いて自動セグメンテーションをすることを検討した。関心領域として,口腔扁平上皮癌一次症例における全組織標本を用いて,Depth of invasion(深達度)計測部の細胞間橋を選定した。
    細胞間橋の分類と評価において,細胞間橋の喪失と生命予後不良との間に密接な関連性を認めた。また,その細胞間橋の自動セグメンテーションを開発することができた。しかし一方で,機械学習による自動描出化については臨床応用にするには不安定要素も多く,まだ改善の余地が多いことが判明した。
症例報告
  • 金山 宏幸, 北村 有理子, 矢谷 実英, 白尾 浩太郎, 鹿野 学, 吉本 仁
    2025 年37 巻3 号 p. 95-103
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは手術を施行した超高齢の下顎歯肉癌患者2症例に対して後方視的に患者評価ツールを用いて評価したのでその概要を報告する。症例1は93歳男性で下顎歯肉癌(cT4aN0M0)の診断で気管切開術,頸部郭清術,下顎区域切除術を行った。術後に胸水貯留と肺炎をきたしたが術後31日で自宅退院となり,現在術後5年で術前と同様のADLで再発なく経過している。症例2は93歳男性で下顎歯肉癌(cT4aN1M0)の診断で気管切開術,頸部郭清術,下顎区域切除術,大胸筋皮弁による再建術を行った。術後に胸水貯留と肺炎をきたし改善するも,術後6週で重度の下血,術後9週で重症不整脈を生じ術後12週で転院となり,転院後4週で肺炎の再燃で逝去した。患者評価ツールは平均余命,ASA,PS,CCI,PNI,MNA,G8,VES-13,fTRST,JCOG高齢者分類,CFS,Frailty-Index,基本チェックリスト,FOIS,FILSおよびE-PASSを用いた。これらの結果から,超高齢者の口腔癌においても全身状態によっては手術適応を検討する余地があり,手術侵襲の低減を考慮することが重要である可能性が考えられた。有用な患者評価ツールと予後予測因子は未だ明らかでないため,今後症例を集積し検討する必要があると考えられた。
  • 中嶋 光, 木本 奈津子, 高橋 望, 西口 雄祐, 森田 展雄, 中山 秀樹, 大亦 哲司
    2025 年37 巻3 号 p. 105-116
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/22
    ジャーナル フリー
    メトトレキサート(MTX)は葉酸代謝拮抗剤に分類される抗腫瘍薬であるが,その免疫抑制作用により関節リウマチ(RA)に対しても高い治療効果を示すことから,現在ではRA治療のanchor drugと位置付けられている。近年その有害事象の一つとしてメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)の報告が散見されるようになり,またRAのガイドラインでも重篤な副作用に分類されている。しかしながらその臨床的な特徴や病態については未解明な部分が多い。今回われわれは2015年1月から2023年12月までに当科を受診したMTX-LPDの5症例の検討を行った。年齢は平均76.8歳,性別は男性2例,女性3例,発症部位は歯肉3例,口底1例,頰部1例であった。症状は潰瘍を主として,腫瘤やリンパ節腫脹を認めた。MTXの内服量は6-16mg/週,内服期間も1-20年と様々であった。病理診断はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)およびホジキンリンパ腫,末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)に一致する所見であった。症例全てでEpstein-Burr virus (EBV) in situ hybridization陽性であった。全症例で休薬後に症状軽快した。2例で骨吸収抑制薬を併用しており,いずれも薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)との鑑別が必要であった。本検討では休薬のみで良好な結果を得たが,過去の報告では増悪し悪性リンパ腫に準じて化学療法を行った症例の報告もあり,十分な経過観察および血液内科等の関係各科との緊密な連携が必要であると考えられた。
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