口腔扁平上皮癌の治療法と予後を判定するために,客観性のある病理組織学的判定は非常に大切である。しかし,臨床現場では慢性的な病理医数の不足や診断者間での不一致が生じることなどの問題も山積しており,機械学習を利用した病理診断支援アルゴリズムの開発に大きな期待が寄せられる。
正常な口腔扁平上皮の組織学的特徴として存在する細胞間橋は,扁平上皮癌においては分化度が低くなるにつれて消失していくことが知られている。しかし,その構造物は狭小であり,病理医が組織標本全体から隈なく区別化して評価することは困難である。
そこで,われわれは口腔扁平上皮癌における細胞間橋の病理組織学的評価を行い,さらに客観的な指標とするために,機械学習を用いて自動セグメンテーションをすることを検討した。関心領域として,口腔扁平上皮癌一次症例における全組織標本を用いて,Depth of invasion(深達度)計測部の細胞間橋を選定した。
細胞間橋の分類と評価において,細胞間橋の喪失と生命予後不良との間に密接な関連性を認めた。また,その細胞間橋の自動セグメンテーションを開発することができた。しかし一方で,機械学習による自動描出化については臨床応用にするには不安定要素も多く,まだ改善の余地が多いことが判明した。
抄録全体を表示