日本口腔腫瘍学会誌
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シンポジウム1:「口腔癌検診」
口腔癌検診(原著)
―岩手県における現状と今後―
杉山 芳樹野宮 孝之熊谷 章子星 秀樹山田 浩之岸 光男
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2016 年 28 巻 4 号 p. 207-215

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抄録
われわれは岩手県において,2つの形式の口腔がん検診を行っているので報告する。この口腔がん検診の1つは個別検診で2010年から開始し,もう1つは集団健診で2011年から開始した。
個別検診は,岩手県歯科医師会会員が各自の診療室で日常の歯科臨床の中で行うものである。われわれは検診のためのマニュアル作成や患者の受け入れを行った。2010年,2011年で岩手県歯科医師会会員は59名の患者の診療依頼書を作成し,その内52名(88.1%)が岩手医科大学附属病院を受診した。52名中8名(15.4%)が病理組織学的に口腔がんであった。集団健診は岩手県大槌町で口腔粘膜疾患のコホート研究として行った。対象は住民2,001名であった。2011年の最初の健診で,2名(0.10%)の口腔がん患者と9名(0.45%)の白板症患者,6名(0.30%)の口腔扁平苔癬患者がみられた。2012年から2015年の間に,2名(0.14%)の口腔がん患者と32名(2.32%)の白板症患者が,さらに23名(1.66%)の口腔扁平苔癬患者がみられた。この期間の受診者は,年平均1,382名であった。
口腔がん患者の早期発見のためには,一般歯科医による日常の診療での個別検診が非常に有効と思われる。また,今回のわれわれのコホート研究で口腔がん,白板症,口腔扁平苔癬の発症率が算出された。今後,研究を継続することで,さらに正確な粘膜疾患発症率や発症因子が判明するものと思われる。
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© 2016 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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