抄録
口腔咽頭がんの罹患率は,世界全体では全がんの6番目に位置している。いまだに進行がんが多く,その生存率は全がんの平均より低い。口腔がんの早期診断,予防策としての口腔がん検診の科学的根拠はいまだ明らかになっていない。2016年ニューヨークでWHOの共催の下に,Global Oral Cancer Forumと題する口腔がんの早期発見,予防に関する世界会議が開催された。その中で口腔がん検診が重要課題として取り上げられた。口腔がん検診の有効性は,口腔潜在性悪性病変のがん化を予測するsurrogate marker,視覚的検査の補助診断の開発が鍵となる。歯科診療所におけるハイリスク(喫煙)グループの個別型口腔がん検診は増分費用効果比の算出から費用対効果は高いと評価されている。一方で,喫煙習慣を有する集団をいかに定期的に歯科診療所の検診の場に勧奨するか,個別検診をどこでどのように実施するか今後の研究を検討する必要がある。