日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
上唇粘膜に発生した多型腺癌の1例
田中 純平矢田 直美高橋 理吉賀 大午松尾 拡冨永 和宏吉岡 泉
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2020 年 32 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

多型腺癌(Polymorphous adenocarcinoma:PAC)は主に口蓋に発生するまれな小唾液腺癌である。本腫瘍は比較的均一な細胞からなるが,組織像は多彩な浸潤増殖像を呈する。われわれは上唇粘膜に発生したPACの1例を経験したので報告する。患者は69歳男性で左側歯肉唇移行部の腫瘤性病変を認めたため,当科へ紹介された。臨床所見として左側上顎歯肉唇移行部に表面性状は正常で,無痛性の境界明瞭な9×9mmの腫瘤を認めた。MRI所見にてT1強調像で中等度の高信号,T2強調像で高信号の腫瘤を認めた。全身麻酔下に左側頰粘膜腫瘍摘出術を施行した。摘出物の病理組織診断はPACであったため,前回手術の瘢痕周囲に健常組織を含めて約5mmの安全域を設計して追加切除した。術後4年経過するが,原発に再発を認めず,頸部や全身への転移もなく経過良好である。

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© 2020 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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