1998 年 10 巻 4 号 p. 260-265
われわれは心転移を含む多発性遠隔転移をきたした口腔癌の2例を経験した。日本病理剖検輯報 (1988年~1992年) によると口腔 (口唇, 舌, 歯肉, その他の口腔および大唾液腺) 原発悪性腫瘍の主な転移臓器は肺・気管・気管支 (48.8%) , 肝・肝内胆管 (24.2%) , 骨・骨髄・椎骨 (22.0%) であった。心臓 (9.1%) は第9位の転移率であった。心 (心筋) 転移率に関しては, 口腔原発悪性腫瘍剖検例では肺原発悪性腫瘍剖検 (10.2%) に次いで高く, また, 口腔原発悪性腫瘍剖検例の中では舌原発悪性腫瘍剖検例 (13.1%) で最も高かった。口腔悪性腫瘍患者の末期においてはこれまで考えられていた以上に心転移症例が多いことが示唆された。