日本口腔腫瘍学会誌
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耳下腺リンパ節転移を生じた口腔粘膜扁平上皮癌の4例
木村 幸紀花澤 智美岡野 友宏
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2005 年 17 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

頭頸部領域の扁平上皮癌の耳下腺リンパ節転移は, 頸部への転移頻度と比較すると頻繁に生じるものではない。耳下腺リンパ節転移のリスクが高い癌がみられる原発領域は, 耳, 眼瞼, 頬後方部, 側頭部および前頭部の頭皮であると報告者によって記載されている。それ故に, 口腔粘膜の扁平上皮癌患者では耳下腺リンパ節は転移を生じうる部位としては見落とされる。口腔からの耳下腺リンパ節転移の症例は, 文献上でも報告が極めて少なく, どのような患者が耳下腺リンパ節転移に発展するリスクがあるのかについては殆ど知られていない。われわれの施設にて, 1990年から2003年の問に耳下腺転移性病変を生じた口腔癌患者の4例をレトロスペクテイブに評価した。そこで, このような症例をCT所見と共に報告し, この主題に関する文献を特に耳下腺リンパ節の解剖学とリンパの経路に重点を置いてレビューした。耳下腺内病変のrim-enhancementとcentral low density areaが耳下腺リンパ節転移の画像診断には有用であった。解剖学的研究によると, 耳下腺リンパ節ヘリンパ排出する口腔の部位は限られているが, 実際口腔のどの部位からも悪性病変の耳下腺リンパ節転移が報告されている。われわれの経験と文献のレビューから, 耳下腺リンパ節は上頸部リンパ節転移に対する頸部郭清術や放射線治療とも関連しているようである。それ故に, 断層画像で上頸部にリンパ節性病変が認められた場合には, 特に治療後においては耳下腺リンパ節への転移に関して耳下腺領域を注意深く検査するべきであろう。口腔扁平上皮癌が耳下腺リンパ節に転移するのは稀れではあるが, 経過観察においては実際的に考慮すべき余地を残している。

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