日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
顎下部に初発した成人T細胞リンパ腫の1例
山本 哲也米田 和典植田 栄作尾崎 登喜雄
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 6 巻 3 号 p. 268-274

詳細
抄録

頭頸部領域におけるT細胞リンパ腫は非常に稀であるが, いわゆるmidline lymphomasはほとんどがT細胞型である。顎下腺に生ずるリンパ腫は極めて稀である。顎下部に生じた成人T細胞リンパ腫の1例を本論文において報告する。70歳の女性が, 左側顎下腺の腫脹の外科的処置を目的に当科へ紹介となった。顎下腺は硬結し, 周囲組織と癒着していた。リンパ節の腫脹は触知出来なかった。顎下腺悪性腫瘍の疑いの下, 摘出術を施行し, 術中凍結切片による病理組織検査を行った。その結果, 悪性リンパ腫 (diffuse, Pleomorphic type) が疑われたため, 頸部郭清術は行わなかった。Adjuvant chemoradiotherapyを行ったが, 術後1年の時点で, 頸部および腋窩リンパ節に腫大を来した。その後, 4か月間にわたり, ステロイド療法を施行したが死の転帰をとった。免疫組織染色の結果, 腫瘍細胞はCD3, CD4, CD25陽性であった。摘出物より抽出したDNAのPCR産物よりヒトT細胞白血病ウイルス1型のゲノムが検出された。しかし, 同ウイルスのDNAをin situ hybridizationで証明することは出来なかった。以上のことより, T細胞の形質転換が顎下部において初めて生じたものと思われた。

著者関連情報
© 日本口腔腫瘍学会
前の記事 次の記事
feedback
Top