抄録
われわれは以前に,ニフェジピンによる歯肉増殖症の原因はニフェジピン感受性歯肉線維芽細胞(NIFr)の増殖亢進とアポトーシス低下であること,18α-グリチルレチン酸(18α-GA)はNIFrの塩基性線維芽細胞増殖因子が誘導する細胞増殖と細胞周期に対して抑制的な効果をもつことを報告している.本研究では,NIFrのアポトーシスに対する18α-GAの影響をアポトーシス細胞数の測定,フローサイトメトリー解析,RT-PCR法を用いて検討した.その結果,18α-GAはNIFrのアポトーシス細胞数(Sub-G1)を増加し,細胞周期のG0/G1期細胞を減少すること,そしてアポトーシス抑制因子であるbcl-2のmRNA発現を抑制することが認められた.またp53のmRNA発現に対する18α-GAの影響は認められなかった.これらのことから,ニフェジピンによって発症する歯肉増殖症を抑制するための薬物療法に,18α-GAを応用することができる可能性があると考えられた.