抄録
歯髄炎などの炎症組織では,結合組織破壊が進行し炎症が増悪する.この結合組織破壊にはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)が関与していることが多く報告されている.さらに歯髄炎ではinterleukin(IL)-1βやtumor necrosis factor(TNF)-αなどの炎症性サイトカインが多く産生され,マクロファージや好中球などの炎症性細胞に影響を与える.そこで本研究では,ヒト乳歯歯髄由来線維芽細胞を用いて,TNF-α刺激による線維芽細胞増殖能,およびMMP-2産生能,さらにその経路についても検討を行った.TNF-αはいずれの濃度においても乳歯歯髄由来線維芽細胞増殖能に影響を与えなかった.また,MMP-2産生はTNF-α濃度依存的に増強が認められた.TNF-α刺激によるMMP-2産生は,MEK1/2阻害剤U0126添加により抑制され,TNF-α刺激により活性化されたERK1/2のリン酸化は,U0126により抑制された.
以上の結果より,TNF-αが乳歯歯髄由来線維芽細胞のMMP-2産生能に影響を与えることが明らかとなった.さらにTNF-αによるMMP-2産生がERK1/2を介してされることが示唆された.