2016 年 35 巻 3 号 p. 127-135
Salubrinalとguanabenzは,eukaryotic translation initiation factor 2 alpha(eIF2α)の脱リン酸化阻害剤として知られていて,それらは,破骨細胞分化のマスター分子であるnuclear factor of activated T-cells, cytoplasmic 1(NFATc1)を低下させ,破骨細胞分化を抑制する.NFATc1の抑制メカニズムはあまり解明されていない.そこで,ゲノムワイドのマイクロアレー解析を用いて,私たちは,特にsalubrinalおよびguanabenzが作用する破骨細胞分化に関与する分子レギュレーターを研究した.私たちは,2つの遺伝子群を同定した.1つは,receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand(RANKL)によって亢進され,salubrinalおよびguanabenzによって抑制される遺伝子群.もう1つは,RANKLによって抑制され,salubrinalおよびguanabenzによって亢進される遺伝子群.マイクロアレーおよびqPCRの結果により,zinc finger protein, FYVE domain containing 21(Zfyve21)とDNA-damage-inducible transcript 4(Ddit4)が,RANKLによって抑制され,salubrinalおよびguanabenzによって亢進されることが明らかになった.また,Zfyve21あるいはDdit4の部分的なサイレンシングがsalubrinalおよびguanabenzによるNFATc1の抑制を軽減させた.総括すると,この研究によりZfyve21およびDdit4が破骨細胞分化の阻害分子であることが明らかになった.このことより,私たちは,それらが骨粗鬆症などの骨疾患から生じる骨量低下を抑制する新規標的分子になりうることを期待する.