歯科薬物療法
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原著
うつと唾液分泌減退
山本 健山近 重生中村 幸香野村 義明斎藤 一郎中川 洋一
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2018 年 37 巻 3 号 p. 93-100

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抄録

【目的】本研究の目的はうつと唾液分泌減退との関係を探ることである.

【対象と方法】口腔乾燥感を主訴に鶴見大学歯学部附属病院ドライマウス外来を受診した911名を対象とした.唾液分泌量に対して,うつと抗うつ薬の2つの要因の,どちらが強い影響を及ぼしているかを明らかにするために, 2次元配置分散分析を用いて解析した.患者は HADS(hospital anxiety and depression scale)のうつスコアによって,0-7,8-10,11-21の3群に分け,さらにそれぞれ抗うつ薬を服用している群と服用していない群に分け検討した.さらに,唾液分泌量に及ぼす性,年齢,抗うつ薬,抗うつ薬以外の常用薬,不安・うつ尺度の影響をロジスティック回帰分析で解析した.

【結果】2次元配置分散分析では,うつ尺度の高い群で唾液分泌量が少なく,唾液分泌減退へのうつ尺度の有意な主効果を認めた.しかしながら,抗うつ薬を服用している群としていない群の間に有意な差はなかった.ロジスティック回帰分析では,唾液分泌量は,うつ尺度,性,年齢の3項目に関連が認められた.HADSでうつと判定されたスコア11-21の群は,性,年齢,常用薬で調整した修正オッズ比が,安静時唾液分泌量の減少に対して2.552,刺激唾液分泌量の減少に対して1.660であった.

【結論】本検討の結果は,抗うつ薬の服用よりも,うつ自体が唾液分泌量減退に密接に関連していることを示唆している.

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© 2018 日本歯科薬物療法学会
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