抄録
Rb蛋白質 (pRb) 発現とその遺伝子突然変異について種々の癌で報告されている.しかし, pRbのリン酸化と腫瘍の臨床的特徴との関係についてはあまり知られていない.本研究ではRb蛋白質の発現とリン酸化について口腔癌標本を用いて検討した.
口腔癌26症例のサンプルを抗Rb抗体にて免疫沈降し, 抗リン酸化Rb抗体 (Thr373, Ser780, Ser807/811) を用いてウエスタンブロット法にて検討した.データはデンシトメーターを用いて分析を行った.
26症例中13症例 (50%) でpRbの発現が認められたが, 26症例中13症例 (50%) でpRb発現の欠失が認められた.対照群ではすべてがpRbを発現していた.pRbは腫瘍群のサンプルがThr373で13症例中7例 (54%) , Ser780で15症例中9例 (69%) , Ser807/811で13症例中12例 (92%) リン酸化を生じていたのとは異なり, 対照群ではすべてがリン酸化を受けていなかった.すべてのリン酸化部位においてT1~T4と癌が進展するに従ってリン酸化が亢進する傾向が認められた.pRbが発現していたり, リン酸化の程度が低い非活性化群に対してpRbが欠失していたり高度にリン酸化されている活性化群はThr373で26症例中20例 (77%) , Ser780で26症例中22例 (85%) , Ser807/811で26症例中25例 (96%) と大半が腫瘍サンプルであった.対照群と腫瘍群では有意差が認められたが, 腫瘍群の中では有意差は認められなかった.
これらの結果からpRbの発現とリン酸化はpRbの機能の重要な指標であることが示唆された.pRbの不活性化は腫瘍発癌の初期に生じるのであって, 腫瘍の進展に伴うものではない.