抄録
骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1は, 骨原性細胞から骨芽細胞に分化し, 培養中にアルカリ性ホスファターゼ (ALP) 活性の上昇を認めin vitroで分泌した基質を石灰化する.細胞膜に結合しているALPは, ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC (PIPLC) を培養液に添加することにより遊離して, 培養液中の遊離ALP活性が増加する.MC3T3-E1細胞の石灰化について, PIPLCを持続的添加しても影響は認められなかったが, 3日ごとに2時間の添加 (短時間処理) をしたところ石灰化期後期に石灰化の亢進が認められた.これらの結果より, 短時間処理による石灰化の亢進は遊離ALPの活性の増大あるいはPIPLC添加によるALP mRNAの増加によるものではなく, 細胞膜に結合したALPの遊離によって膜に埋め込まれていたALPが露出すること, そして新しく膜上に発現したALPが細胞の石灰化にとっては重要な働きをする可能性があることが示唆された.