2003 年 22 巻 3 号 p. 105-110
マクロファージは感染制御に必要不可欠であり, 自然免疫機構において重要な役割を担っている.感染が惹起されるとlipopolysaccharide (LPS) がマクロファージを刺激し, 炎症性サイトカインが産生される.一方, adenosineおよびATPは免疫刺激によっても細胞外へと放出された後, 様々な免疫機能を調節することが知られている.そこでわれわれは炎症やTh1/Th2バランスに関与するサイトカイン産生に対するadenosineおよびATPの免疫学的影響を検討した.AdenosineおよびATPはそれぞれマクロファージによるIL-10産生能を増強させたが, IL-1βおよびIL-12の産生能には影響を与えなかった.さらに, adenosineおよびATPはLPSで刺激したマクロファージによるIL.1βおよびIL-12に産生能を抑制した.これに対して, adenosineはLPSで刺激したマクロファージによるIL-10産生能を抑制したが, ATPは同IL-10産生能を増強した.以上の結果より, adenosineおよびATPが増加するような条件下においては, Th1やTh2免疫応答を含む広範囲な免疫反応に, なんらかの重要な役割を担っている可能性が示唆される.