日本小児アレルギー学会誌
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原著
アレルギー児を学校で支える研修事業
長岡 徹園部 まり子
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ジャーナル 認証あり

2012 年 26 巻 5 号 p. 747-755

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抄録
〔目的〕全国の小中高校に配布された「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(監修:文部科学省,発行:(財)日本学校保健会)に基づくアレルギーの子どもへの支援の目的で,小児アレルギー専門医を学校に招いて講習会を行い,その有効性と問題点を調査した.
〔方法〕平成21, 22年度にかけて,研修の実施を希望した神奈川県内の公立小・中学校の中から県教育委員会が選定したアドレナリン自己注射薬「エピペン®」(以下「エピペン®」と記す)を所持するなど重篤な食物アレルギー児が在籍する21校に,(社)日本アレルギー学会認定の指導医・専門医が出向き,教職員を対象に1時間半程度の講演と30分程度の質疑応答を行った.講習後,参加者に自記式アンケートで講習会の有効性,問題点を調査した.
〔結果〕参加者アンケート結果では,設問ごとの集計で有効回答799人のうち,研修が「大いに役立つ」600人(75%),「どちらかと言えば役立つ」181人(23%),合わせて98%の参加者が「役に立つ」と回答した.課題とされる「エピペン®」の必要性について尋ねた設問(有効回答788人)では,やはり設問ごとの集計で小児アレルギー専門医による説明を通して,「理解できた」666人(85%),「どちらかと言えば理解できた」120人(15%)に上った.
〔考案〕小児アレルギー専門医が学校に出向いて行う研修を数多く実施することは難しいが,研修の機会が多い養護教諭だけでなく,子どもたちと最も多くの時間を過ごす担任となる教諭に対しても十分に行われる必要があると思われた.教職員の具体的な疑問に答える専門医との質疑応答を重視したガイドブックの作成など,今後,さらに有効性を高める形の研修実施が望まれる.
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© 2012 日本小児アレルギー学会
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