日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
原著
  • 津村 由紀, 明石 真幸
    2024 年 38 巻 2 号 p. 139-151
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    目的:Patient-Centered Care(PCC)は医療の質の必須要素で,Shared Decision Making(SDM)はPCCの為の意思決定支援法である.日本の小児アレルギー診療でのPCC・SDMのニーズを評価し,その質の向上に貢献する.方法:PCC・SDM認知の程度について,アレルギー診療医師とそれ以外にアンケートを行った.医中誌とPubMedでSDM関連文献について,疾患領域毎,また小児アレルギー領域内での数と比率を調査した.結果:アレルギー診療医師とそれ以外で「PCCを聞いたことがない」は12/39(31%),5/21(24%),「SDMを聞いたことがない」は12/39(31%),4/21(19%)だった.医中誌でアレルギー疾患のSDM文献数は領域内の0.04%,またPubMedでは0.08%だった.医中誌で小児アレルギー疾患のSDM文献数は1だった.結語:PCC・SDMの認知や論述は不足しており,小児アレルギーの医療の質向上にはこれらの視点が必要である.

    Patient-Centered Care(PCC)、Shared Decision Making(SDM)を「聞いたことがない」アレルギー医は約3割、医中誌とPubMedで小児アレルギーのSDM文献は合計10だった。日本のアレルギー領域におけるSDM文献が精神・腎疾患領域より少ない事は国際的傾向と比較しても特異であり、医療の質の必須要素であるPCC・SDMの認知や論述は不十分と思われた。 Fullsize Image
    鉛筆のピクトグラム引用サイト 無料のAi・PNG白黒シルエットイラストAi・PNG・JPGのアイコンイラスト無料ダウンロード! https://www.silhouette-illust.com/illust/14518
  • 大仲 雅之, 大久保 天進, 西川 宏樹, 鈴木 里香, 吉田 さやか
    2024 年 38 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    近年の新生児医療の進歩の結果,気管切開や胃瘻等を有し,常時医療的ケアを要する児(医療的ケア児,以下医ケア児)の数は年々増加傾向となっている.それに伴い食物アレルギーを有する,またはその疑いがある医ケア児の数も増加していくことが予想されるが,診断確定や摂取可能量の判定のために不可欠である食物負荷試験を経鼻もしくは経胃瘻的(経管的)に行ったとする報告はこれまでなされていない.これまでに我々は3名の医ケア児に対して計5回の経管的な食物負荷試験をおこなった.目標量を少なめに設定する,養育者や児の看護を経験したスタッフによる観察を特に密に行う,などの対策を行い,治療を要したのは抗ヒスタミン薬内服を行った1回のみで,安全に実施可能であった.摂取可能な食物を増やすことができたのみならず,それまでは使用できていなかった成分栄養剤を用いることができるなど,メリットも大きかった.経管的な負荷試験に対する経験をさらに積みあげ,実施可能な施設が増えていくことが望まれる.

  • 中里 友美, 坂井 聡, 松井 照明, 北村 勝誠, 高里 良宏, 杉浦 至郎, 伊藤 浩明
    2024 年 38 巻 2 号 p. 158-168
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    【目的】学校給食の食物アレルギー対応について,患者に対して実態調査を行うこと.

    【方法】あいち小児保健医療総合センターアレルギー科を受診した,学校に1品以上の食物除去の依頼をしている愛知県の小学生の保護者を対象に,2017年7月の卵,乳,小麦に関する対応の調査を行った.

    【結果】有効回収数は184人で,36市町村(共同方式33市町村)が該当した.25人(13.6%)は完全弁当持参であった.それ以外の159人の対応依頼食物の内訳は,卵94人(59%),乳67人(42%),小麦24人(15%)だった.副食での提供日数が0~2日であった献立表は卵32%,乳55%,小麦0%であった.料理ごとの対応では卵58%,乳79%,小麦84%が無配膳であった.最終工程のみ調理する半加工品の利用から代替食による提供が難しいために無配膳となる傾向にあった.

    【結語】卵,乳,小麦を含まない給食提供日を増やす,小麦も不使用の加工品の利用等により,給食費や現場の負担も考慮しながら,安全に1品でも多く給食提供することが望まれる.

    2017年夏休み期間中、当科に受診した、学校給食にて1品以上のアレルギー対応を依頼している小学生を対象に7月の献立表をもとに給食対応のアンケート調査を行った。その結果、卵、乳はひと月の提供頻度を意識的に抑える献立表が存在したが、卵、乳、小麦ともに無配膳対応が多くを占めていた。 Fullsize Image
  • 大津 亜衣, 内藤 宙大, 岩脇 由希子, 松井 照明, 伊藤 浩明, 和泉 秀彦
    2024 年 38 巻 2 号 p. 169-177
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    【目的】ゆで時間の異なるゆで卵を作製し,卵白タンパク質の溶解性とIgE結合能を解析することを目的とした.

    【方法】生卵と経時的にゆでた卵の卵白を凍結乾燥し,PBS,ドデシル硫酸ナトリウムと尿素を含む溶液,及び2-メルカプトエタノール溶液(2-ME溶液)でタンパク質を抽出し,阻害ELISA,SDS-PAGE,IgE-イムノブロットで解析した.

    【結果】PBS画分においてオボアルブミン(OVA)量は7~9分の間で有意に減少したのに対し,オボムコイド(OVM)量は2分以降変化しなかった.SDS-PAGEでは,PBS画分のオボトランスフェリン,OVA,リゾチームが経時的に消失し,2-ME溶液画分で検出された.OVMは20分ゆでてもPBS画分から消失しなかった.PBS画分のIgE結合タンパク質は,5分前後及び10分前後で減少した.

    【結論】OVMを除く卵白タンパク質はゆで時間10分まで水に対して次第に不溶化し,それ以降は変化しなかった.本研究結果は,加熱鶏卵の摂取指導に関する基礎データとなる.

    ゆで時間の異なるゆで卵を作製し、卵白タンパク質の溶解性とIgE結合能を解析した結果、OVMはゆで時間20分でも不溶化せず、その他のタンパク質は10分までに次第に不溶化し、それ以降は変化しなかった。PBS画分のIgE結合タンパク質は、5分前後及び10分前後で減少した。 Fullsize Image
  • 和田 拓也, 足立 雄一, 村上 将啓, 清水 宗之, 加藤 泰輔, 足立 陽子
    2024 年 38 巻 2 号 p. 178-186
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    【背景】食物アレルギー(FA)の多くは非アレルギー専門医(非専門医)が診療している.

    【目的】FA児に対する非専門医の診療内容を明らかにする.

    【方法】2017年度,富山市保育所に提出されたアレルギー疾患生活管理指導表の記載内容を調査した.

    【結果】入所児童は11,292名で,生活管理指導表の提出者は740名(6.6%)であった.うち431名(58.2%)は非専門医が記載していた.非専門医が記載した対象者は,専門医に比してアナフィラキシー既往者が有意に少なかったが,除去食物数の差はなかった.除去根拠は鶏卵,牛乳で食物負荷試験陽性が専門医の方で有意に多かった(鶏卵8.8%/1.0%,牛乳8.9%/1.7%).非専門医は卵殻カルシウム,乳糖で有意に多く除去を指示していた.

    【結論】非専門医は半数以上のFA児の診療をしており,微量成分を含む除去指示を多くしていた.今後,専門医との医療機関連携を通じ,食物アレルギー診療の均てん化を進める必要があると考えられる.

    食物アレルギー児に対する非アレルギー専門医の診療内容を明らかにする目的で、アレルギー疾患生活管理指導表の記載内容を調査した。生活管理指導表の提出者のうち過半数は非専門医が記載していた。非専門医は微量成分の除去指導が有意に多く、適切なタイミングでの専門医への紹介などが必要である。 Fullsize Image
総説
  • 野村 伊知郎
    2024 年 38 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    食物蛋白誘発胃腸症(消化管アレルギー)は,IgE抗体に依存しない食物アレルギーの一種である.細胞性免疫が主体と考えられており,急性の嘔吐発作を起こす,acute food protein-induced enterocolitis syndrome(Acute FPIES)と慢性炎症を呈する,Chronic typeとに分かれる.Acute FPIESは,2017年に発表された国際診療ガイドラインで診断基準が確立し,同時期に我が国では卵黄によるAcute FPIESが急増したため,小児科領域のポピュラーな疾患となった.一方,Chronic typeは1990年代終わりから増加してきた.こちらは,新生児期,乳児期早期に多く,消化管慢性炎症から栄養障害,神経発達症を起こすこともあるため,注意すべき疾患である.Chronic typeのサブグループ病名は,正確な診断に至るために,かなり狭い条件を必要としていて,いずれのサブグループにも適合しない患者が存在する.今後の改訂によって,多くの児が正しくサブグループ病名をつけられることが望まれる.本稿は,現行のMinds準拠診療ガイドライン,国際診療ガイドラインや権威あるレビューの情報を整理するとともに,興味深い新知見を紹介することによって,本症の現状を俯瞰的に理解する一助となるよう執筆させていただいた.

  • 北村 勝誠, 伊藤 浩明
    2024 年 38 巻 2 号 p. 196-203
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    近年,木の実類アレルギーは,特に日本を含む先進国において増加が報告されている.2020年の即時型食物アレルギーの全国調査では木の実類は原因食物の第3位となり,2011年の結果と比較して約6倍に増加している.木の実類アレルギーは重篤な症状を起こしやすく,特にクルミとカシューナッツの頻度が高い.臨床的特徴として,幼児期から発症がみられること,初発の割合が高いこと,アトピー性皮膚炎や他の食物アレルギーの合併が多いことが挙げられる.木の実類による予期せぬ初発アナフィラキシーを防ぐための注意喚起が求められている.特にハイリスクの児に対しては,初回摂取前に特異的IgE抗体価の評価を行うことも検討され,その結果に基づいて食物経口負荷試験 や慎重な自宅摂取を行って不必要な除去を減らすことは,総合的に見て患者の利益につながると考えられる.本稿では最新の文献に基づいて木の実類アレルギーの現状をまとめ,木の実類によるアナフィラキシーを防ぐための対応策について提言を行った.

解説:免疫アレルギー疾患における分子標的薬
  • 野澤 智
    2024 年 38 巻 2 号 p. 204-210
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    トシリズマブ(tocilizumab,TCZ)は,わが国で初めて開発された抗interleukin(IL)-6受容体モノクローナル抗体である.TCZは可溶型または細胞膜結合型のIL-6受容体に結合し,IL-6とその受容体との結合を阻害することで,その後のシグナル伝達を抑制し炎症を沈静化する作用を有する.IL-6をターゲットにした薬剤は,TCZの他に数種類あるが,小児ではTCZのみ保険適用となっている.現在,TCZは若年性特発性関節炎や高安動脈炎などリウマチ性疾患に対し使用されているが,さらに,近年,腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群,SARS-CoV-2による肺炎に対しても適用承認され,リウマチ分野以外にも用いられる薬剤である.本稿では,TCZの作用機序,適用,導入前の評価,副作用,今後の展望について解説する.主に小児科領域の臨床現場において,適切な使用の参考として役立つことを期待する.

  • 脇口 宏之
    2024 年 38 巻 2 号 p. 211-217
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    小児リウマチ性疾患の代表である若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)や川崎病(Kawasaki disease:KD)において,メトトレキサートや免疫グロブリンといったアンカードラッグに不応な症例が存在する.腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)阻害薬の登場により,これらの難治性症例が治療できるようになった.日本では2009年に初めて小児にTNF阻害薬が使用可能となり,現在では完全ヒト型可溶性TNFα/TNFβ受容体であるエタネルセプト(etanercept:ETN),ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体であるアダリムマブ(adalimumab:ADA),抗ヒトTNFαモノクローナル抗体であるインフリキシマブの3剤が用いられる.メトトレキサートに不応な多関節に活動性を有するJIAにおいて,ETNは0.2~0.4 mg/kgを週2回で皮下注射し,ADAは20 mgまたは40 mgを2週に1回で皮下注射する.関節炎に対する有効性はETNとADAとは同等とされているが,今後臨床研究が進み層別化治療ができるようになることが望まれる.ぶどう膜炎に対する有効性はADAのほうが高い.免疫グロブリン静脈内注射に不応な川崎病において,インフリキシマブは,5 mg/kgを単回で点滴静脈内注射する.その投与は2nd lineから可能であるが,3rd lineの使用に習熟した専門施設で行う.

  • 山本 健
    2024 年 38 巻 2 号 p. 218-224
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    抗IL-1薬は,ヒトIL-1βの作用を阻害する抗体製剤である.IL-1βはインフラマソームの活性化により誘導される炎症性サイトカインであり,IL-1βが病態形成に関与する疾患は非常に多岐にわたっている.本稿では我が国で使用可能な抗IL-1薬のcanakinumabを中心にその作用機序や効果,今後の展望について述べる.IL-1βを標的とする治療薬は,完全ヒト抗IL-1β抗体のcanakinumabだけではなく,海外ではIL-1受容体アンタゴニストのanakinra,またIL-1 trapのrilonaceptが使用可能である.canakinumabは,クリオピリン関連周期熱症状群をはじめとする自己炎症性疾患のみならず,全身型若年性特発性関節炎に適応があり,さらに欧米においては成人still病や痛風性関節炎に対する適応がある.今後も様々な炎症におけるIL-1の作用が明らかとなることで,難治性疾患の病態解明ならびに抗IL-1薬を用いた病勢のコントロールが期待される.

  • 長尾 みづほ
    2024 年 38 巻 2 号 p. 225-232
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    Thymic stromal lymphopoietin(TSLP)は,上皮細胞由来のサイトカインであり,自然免疫および獲得免疫の経路を介して2型炎症の誘導に重要な役割を果たす.テゼペルマブは,TSLPがTSLP受容体に結合するのを阻害するヒトIgG2モノクローナル抗体であり,喘息の新しい生物学的製剤である.テゼペルマブの喘息における有効性と作用機序を評価するために,PATHWAY,NAVIGATOR,NOZOMI,UPSTREAM,CASCADE,SOURCE,DESTINATIONなどといったいくつかの臨床試験が実施されている.これらの結果は,テゼペルマブが幅広いターゲットの生物学的製剤であり,表現型に関係なく吸入ステロイド(ICS)ではコントロール困難な喘息患者に有効であることが期待されているが,テゼペルマブの作用機序や非2型表現型の患者における有効性,経口ステロイド依存性喘息への影響などはまだ不明であり,さらなる研究が必要である.小児の喘息治療における生物学的製剤の選択はまだ確立されておらず,患者の病態に応じた適切な治療法の選択ができるよう検討が必要である.

ガイドライン解説:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2023
  • 高岡 有理, 北沢 博, 二村 昌樹, 滝沢 琢己
    2024 年 38 巻 2 号 p. 233-237
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023は,既存のガイドラインと同様にMinds診療ガイドライン作成マニュアルに沿って作成されている.

    ガイドラインのclinical question(以下CQ)は,エビデンスに沿った治療の推奨を目的として,専門家により意見が分かれる喘息治療の課題について設定された.今回はこれまでに設定された12のCQを継続し,新規に2つのCQを加えた.新規のCQは,患者指導として行われてきた環境中のダニアレルゲン対策の効果についてと,日常診療でしばしば行われている乳幼児のウイルス性喘鳴に対するステロイド薬投与の効果についての2つが選定された.

    システマティックレビューは,各CQにおける既報の報告を参考にし,同様の方法でアップデートレビューを行い報告書にまとめられた.主なデータベースとしてMEDLINE, Embase, CENTRALを使用した.CQの推奨文は,報告書をもとにガイドライン委員による投票によって決定された.

    診療医がCQの推奨文を活用する際には,ガイドラインに記載されている推奨文の解説も確認する.さらに本学会誌に掲載されている報告書も参考となる.

  • 清水 真理子, 山田 佳之
    2024 年 38 巻 2 号 p. 238-243
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    日本小児アレルギー学会による「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」(以下JPGL)の普及,治療法の進歩により,全国的に均一な治療が可能になり,喘息死亡率は低下し,重症例が減少した.しかしながら,中等症持続型や重症持続型に分類される例や成人期まで持続する例もあり,小児の治療でも生物学的製剤の使用も可能になっている.喘息の基本病態は慢性の気道炎症と気道過敏性であるが,近年では小児に多いアトピー型だけでなく,自然免疫からの非アトピー型も注目されている.小児では乳幼児期特有の病態により喘息と診断することが困難な例も多い.喘息の病態生理を知ることで,鑑別診断や治療ステップの適切な選択や,病態に応じての生物学的製剤の選択使用が可能になると思われる.本編ではJPGL2023の第2章「定義,病態生理,診断,重症度分類」について,解説する.

  • 永倉 顕一, 海老澤 元宏
    2024 年 38 巻 2 号 p. 244-249
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル 認証あり

    「小児気管支喘息・治療ガイドライン(JPGL)2023」の第3章 疫学,発症の危険因子と一次,二次予防では,章立ての再編に伴い2点の大きな変更があった.1点目はJPGL2020までは異なる章で記載されていた小児喘息の疫学および発症の危険因子と予防の内容を一つの章にまとめて記載した点,2点目は急性増悪の危険因子を別章(第6章)での記載とした点である.その他では,「厚生労働省,小児アレルギー学会が実施している疫学調査」のデータを最新版に変更した点,近年の複数の国内大規模調査の結果を踏まえて「国内の有症率の表」を大幅に変更した点,2020年以降に発表された本邦を中心とする30本以上の新規論文を踏まえた「新しい知見」を追加した点がJPGL2020からの主な変更点である.2019年から発生したSARS-CoV-2が小児喘息の発症と急性増悪に関連するとの知見は乏しいが,COVID-19のパンデミック以降,各ウイルス感染症の流行パターンは著しく変化しており,今後の発症,急性増悪への影響が注視される.

疫学委員会報告
feedback
Top