日本小児アレルギー学会誌
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原著
  • 村上 至孝, 楠目 和代, 小泉 宗光
    2020 年 34 巻 5 号 p. 525-529
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    入浴は食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)の発症に関与する要因の1つとされている.今回,モモを摂取後に入浴して発症したFDEIAの1例を経験したので報告する.症例は8歳の女児.生のモモを摂取して10分後に入浴し,30分後からアナフィラキシーが出現した.モモのprick-to-prick testは陽性,モモ特異的IgEは5.35UA/mLであった.モモによるアナフィラキシーを疑い,生のモモの食物経口負荷試験を実施したが陰性であった.アスピリンを内服後に生のモモを摂取し運動負荷を行ったところアナフィラキシーが誘発された.アレルゲンコンポーネント特異的IgEはPru p 3は陰性,Pru p 7は陽性であった.食後の入浴により発症したFDEIAの報告は少なく,入浴でアナフィラキシーが誘発されるメカニズムは十分に解明されていないが,入浴は本症の発症に関与する要因の一つとして認識しておく必要がある.

  • 渋谷 紀子, 斉藤 恵美子, 苛原 誠, 木戸 博
    2020 年 34 巻 5 号 p. 530-536
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    【背景】胎内感作の意義はいまだ明らかでない.【目的】新生児血中抗原特異的IgEを高感度測定法により測定し,乳児期の感作および食物アレルギー(FA)発症との関係を明らかにすること.【方法】125名の出生コホート研究を行った.新生児血中抗原特異的IgEを高性能蛋白チップにより測定し,6,12か月時に児のプリックテスト(SPT)を,0,1,6,12か月時に保護者へのアンケート調査を行った.【結果】125例の新生児血のうち,84%で何らかの抗原特異的IgEが検出され,約50%で卵白特異的IgEが陽性であった.新生児血中抗原特異的IgEは,SPTやFA発症と相関を認めなかった.妊娠中の鶏卵摂取量と新生児の鶏卵特異的IgEにも関連は認めなかった.生後早期の湿疹は,単変量解析ではSPTおよびFA発症と,多変量解析ではSPTと有意に関連していた.【結論】新生児血中IgEと乳児期の感作およびFA発症には関連が認められなかった.食物アレルギーに関与する感作は出生後に成立することが示唆された.

  • 野村 真也, 大石 拓, 森畑 東洋一, 藤枝 幹也
    2020 年 34 巻 5 号 p. 537-542
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    症例は9歳の女児.主訴は呼吸困難.母親に気管支喘息,父親に魚介類のアレルギーがある.気管支喘息の診断で近医にて重症持続型として管理されていたが,コントロール不良であり当科に紹介された.入院時,SpO2 98%(room air)であったが,呼吸音は減弱していた.入院後,乱れた生活リズムや,足の踏み場のないような家庭環境であることが判明した.治療は高用量の吸入ステロイド薬とロイコトリエン受容体拮抗薬の治療を継続した.父親と祖父が物を捨てることに消極的で掃除は進まず,最低限患児の過ごす場所の片付けを行ったことを確認し,入院100日目に退院した.しかし退院4か月後に再び増悪した.再入院し患児の症状は速やかに改善したが,家庭環境はさらに増悪しており,両親共に環境整備を先延ばしにしていた.期限の設定を行い,小学校教員や市の職員の協力もあり,家庭環境は劇的に改善され退院した.現在も再入院なく経過している.本症例を通して,気管支喘息の管理においての環境整備の重要性を再認識した.

  • 濱田 匡章
    2020 年 34 巻 5 号 p. 543-550
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    【目的】標準化ダニアレルゲンエキス皮下免疫療法(以下ダニSCIT)の急速導入期の全身性副反応(以下SR)出現のリスク因子を明らかにする.【方法】ダニSCITを急速法で導入した68例で,SRの有無別に月齢,標準化ダニアレルゲンエキス注射液(以下ダニ注射液)の閾値・急速導入期の開始抗原量・急速導入期の目標抗原量,導入する季節,アレルギー疾患の併存の有無,気管支喘息・アレルギー性鼻炎の重症度といった背景因子について検討した.【結果】ダニSCITの急速導入期のSRは,68例中44例(65%)に出現し,SR出現のリスク因子は,急速導入期のダニ注射液の目標抗原量を500JAUに設定すること,夏季以外に導入すること,アレルギー性鼻炎症状服薬スコアが高値であることであった.【結論】ダニSCITの急速導入期で,導入前にアレルギー性鼻炎の症状を厳格にコントロールし,急速導入期のダニ注射液の目標抗原量を減量し,夏季に導入することでSRが減少する可能性があることが示唆された.

  • 大島 美穂子, 成瀬 徳彦, 伊藤 浩明
    2020 年 34 巻 5 号 p. 551-559
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    【背景】食物アレルギーによる給食の除去対応は,給食で提供される最大量を超えて食べられることを確認したうえで解除される.

    【目的】地域の学校給食における卵,乳の最大使用量を明らかにする.アレルギー対応食の栄養を評価するとともに,食物アレルギー児が通常給食を喫食できる基準を考察する.

    【方法】愛知県豊田市の2018年度の学校給食198食を対象に,卵と乳の使用量を献立表と加工品の納入物資明細書より調査した.また,卵,乳アレルギー対応給食と通常食の栄養価を算出し,学校給食摂取基準と比較した.

    【結果】豊田市の飲用牛乳を除いた給食1食における卵の最大使用量は45 g,乳タンパク質最大含有量は5.93 gであった.乳を完全除去した牛乳アレルギー対応食では,カルシウム摂取が学校給食摂取基準の21.9±9.2%にとどまった.

    【結論】自治体の給食における使用量より,食物アレルギー対応が必要な基準を示すことができた.乳除去対応は著明なカルシウム不足につながるため,除去解除の根拠となる具体的な使用量を開示することは有意義であると考えられた.

  • 桐野 沙希子, 東 範彦, 小谷 碧, 國井 優子, 萩原 幸世, 大谷 智子
    2020 年 34 巻 5 号 p. 560-565
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    β2刺激薬の副作用として,振戦,頻脈,低カリウム血症,高血糖,乳酸アシドーシスが存在する.

    今回我々は,感冒症状に対し塩酸プロカテロールを処方され,嘔気,頻脈を主訴に当科を受診し,精査の結果,乳酸アシドーシスと低カリウム血症を認めた症例を経験した.症例は10歳女児,感冒症状のため入院2日前に近医を受診し塩酸プロカテロール50μg錠2錠/日を処方された.入院当日の朝に塩酸プロカテロール1錠を内服し,内服2時間半後に嘔気と頻脈,嘔吐を認め,内服4時間半後に当院を受診した.頻脈,腹痛,振戦,乳酸アシドーシス,高血糖を認め,入院にて血清カリウムとアシドーシスの補正を行った.塩酸プロカテロール内服7時間後の血中濃度を測定した所,79.4pg/mLであった.

    これまでβ刺激薬の長期内服による低カリウム血症や多量吸入による乳酸アシドーシスの報告は散見されるが,短期間の内服で発症した報告は少ない.塩酸プロカテロールは小児から成人まで広く使用されている薬剤だが,小児でも副作用に注意して用いる必要がある.

  • 髙栁 文貴, 西田 光宏, 山本 崇晴
    2020 年 34 巻 5 号 p. 566-572
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    症例は10歳女児.前医で5歳時に気管支喘息と診断され,吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid:ICS)の吸入とロイコトリエン受容体拮抗薬(leukotriene receptor antagonist:LTRA)の内服で加療を行っていた.喘鳴症状が継続し,10歳時に当科を紹介され,受診した.胸部聴診で呼気性喘鳴を認め,副鼻腔CTでは副鼻腔に液体貯留を,胸部X線写真,胸部CTではそれぞれ粒状影を認めた.血液検査で寒冷凝集素価の上昇を示し,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)と診断した.診断後はクラリスロマイシン(clarithromycin:CAM)の内服を開始し,約5か月の投与で呼吸機能の改善が認められた.現在は,無治療で経過観察しているが,呼吸器症状と呼吸機能の悪化を認めていない.喘息として長期に治療を行っても症状が改善しない場合,DPBも鑑別に挙げるべきである.

  • 佐藤 大記, 二瓶 真人, 堀野 智史, 三浦 克志
    2020 年 34 巻 5 号 p. 573-578
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    【目的】食物アレルギー診療ガイドライン2016では,食物経口負荷試験(OFC)で重症度分類グレード1(軽症)の症状が見られた際には自宅での反復摂取を勧めている.本研究ではOFCで軽症症状を来した症例における自宅反復摂取の安全性を評価する.

    【方法】2013年1月から2018年4月に宮城県立こども病院で鶏卵,牛乳,小麦,ピーナッツOFCを受け,グレード1に相当する症状が見られた症例を対象に,自宅反復摂取時の誘発症状や転帰を後方視的に検討した.

    【結果】161例が解析対象となった.検査時年齢中央値3.9歳,総IgE値418 IU/mL,合併疾患はアトピー性皮膚炎または湿疹159例,気管支喘息69例であった.自宅でOFCと同量の負荷食品を反復摂取し症状なし144例(89.4%),症状あり17例(10.6%)であった.症状の重症度はグレード1が16例,グレード2が1例であった.

    【結論】OFCでの症状が軽症であった場合,自宅反復摂取は比較的安全であるが,症状誘発時の対応の指導が必要である.

  • 景山 秀二, 三重野 孝太郎, 小山 隆之, 小林 茂俊
    2020 年 34 巻 5 号 p. 579-583
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    小児の食物アレルギー患者は現在も増加しつつあり,治療として食物除去を行っている場合は患者のquality of life(QOL)が低下するため,社会問題ともなっている.中でも牛乳は食物アレルギーの主なアレルゲンで食物アレルギー全体の2割程度を占め,特に乳児期に多く発生する.今回我々は,牛乳タンパクを練りこんだレーヨン繊維を使用した肌着の着用後に接触蕁麻疹を呈した4か月の牛乳アレルギーの男児例を経験した.本症例では数日前よりミルク摂取にて皮膚の即時型症状が出現していたが,当該肌着の着用直後に肌着の接触する体幹部を中心とした発赤,紅斑,膨疹が出現した.牛乳,カゼイン特異IgE抗体は陽性で,当該肌着のパッチテストにて発赤,膨疹が観察されたため,診断が確定した.最近,アレルゲンとなりうる食物タンパク由来の物質が食品だけでなく,衣類,化粧品などに添加されることが増えているが,安易な添加はアレルギー症状の発症を誘発する可能性もあり注意を要する.

総説
  • 村上 洋子
    2020 年 34 巻 5 号 p. 584-593
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)は本邦では全人口の約1割が罹患する疾患で,小児科の日常診療で遭遇する機会が多い.基本治療を行っているにもかかわらずコントロール不良な難治性ADは稀ではない.その理由は,患者側,医療者側それぞれの問題があり,臨床医の立場から対応について述べた.

    患者側の問題として,治療アドヒアランス不良,AD自体が重症であることなどが挙げられる.アドヒアランス不良は,治療の主体が保護者から本人に移行するのに備えて,それぞれの対応が必要である.中でもステロイド忌避は問題で,ステロイド外用薬の副作用の誤解により,症状の再燃を繰り返し,さらなるアドヒアランスの低下,皮疹の重症化を引き起こす.

    医療者側の問題として,鑑別診断,合併症の存在,不適切な薬物療法や患者教育などが挙げられる.薬物療法に関しては,不適切な外用薬の選択,不十分な患者指導などの可能性があり,改めてその選択,方法を見直す必要がある.さらに,外用薬以外の治療法もあり,選択肢が広がっており小児の適応なども含めて述べる.

  • 中島 沙恵子, 椛島 健治
    2020 年 34 巻 5 号 p. 594-601
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    アトピー性皮膚炎は,増悪と寛解を繰り返し,掻痒のある湿疹を主病変とする慢性炎症性皮膚疾患である.アトピー性皮膚炎の発症や増悪には,皮膚バリア機能,環境要因,遺伝素因,皮膚常在細菌などの様々な要素が関わっており,皮膚バリア,アレルギー炎症,かゆみの3つの要素が中心となり病態を形成する.

    アトピー性皮膚炎ではTh2型の免疫応答が亢進しており,Th2細胞から産生されるサイトカインであるIL-4,IL-13,IL-31がかゆみの誘導に重要な役割を果たす.また,バリア機能異常のある皮膚を介した経皮感作により誘導される獲得免疫応答は,アレルギーマーチの誘導に重要である.

    アトピー性皮膚炎の治療の中心は,ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などの抗炎症外用薬と,保湿剤による皮膚バリア機能の改善(スキンケア)である.Th2サイトカインであるIL-4とIL-13の作用を阻害する抗IL-4受容体抗体であるデュピルマブは,中等度から重症のアトピー性皮膚炎に高い治療効果を発揮する.

解説:アレルゲン
  • 福家 辰樹
    2020 年 34 巻 5 号 p. 602-611
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    野菜や果物の摂取は生活習慣病予防をはじめとした健康維持に推奨される一方で,近年,花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)を中心とした野菜・果物アレルギーの増加が報告されている.野菜や果物の摂取による誘発症状としては,新鮮な食品を摂取した後に口腔周囲に限局して出現し自然消退するものが多くを占めるが(口腔アレルギー症候群),口腔に限らずアナフィラキシーショックを含めた全身症状を呈する症例もある.これらは原因アレルゲンの熱安定性や消化耐性などの特徴によるものと考えられており,近年は全身性アレルギー症状を来す果物アレルギー症例に関する原因アレルゲンの研究が進んでいる.特にイタリアや日本において重篤な全身性モモアレルギーの原因アレルゲンとしてGRPが同定されるなど,新しいタンパクや病態が判明しつつある.食物アレルギー診療における正確な診断や原因検索のためには,野菜や果物におけるアレルゲンコンポーネントや,種を超えて高度に保存される汎アレルゲンの理解がますます重要になると考えられる.

  • 佐藤 さくら
    2020 年 34 巻 5 号 p. 612-619
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル 認証あり

    ナッツ類・種子類はIgE依存性食物アレルギーの主な原因食物のひとつであり,ピーナッツ,クルミ,カシューナッツは重篤な症状誘発の頻度が高い.ナッツ類・種子類は大きく4種類(プロラミン,クーピン,Bet v 1ホモログ,プロフィリン)のスーパーファミリーに分類され,構造的な特徴から異なる熱・消化耐性を示す.一定の割合でアミノ酸配列の同一性を示すため,多抗原感作を認めることが多いが,感作のみで臨床症状を伴わないことも多い.近年,アレルゲン解析の技術が進歩し,臨床的な診断精度が向上した.貯蔵タンパク質はプロラミン,クーピンに属し,アレルギー症状の誘発に関連する.ピーナッツのAra h 2,大豆のGly m 8,クルミのJug r 1,カシューナッツのAna o 3,ヘーゼルナッツのCor a 9とCor a 14,ゴマのSes i 1の診断有用性が報告されている.本稿では,ナッツ類・種子類のアレルゲンおよびその臨床診断への利用について紹介したい.

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