抄録
ここ数十年の気管支喘息の薬物療法の進歩には目覚ましいものがあり,発作のコントロールは極めて容易になった.しかし,薬物療法の効果は一時的で,中止とともに速やかにその効果は失われ,遠隔的な予後の改善や発症予防の効果はない.
アレルゲン免疫療法はIgEが介在して引き起こされる症状を緩和する治療法で,花粉症やハチ毒アレルギーでその有用性は確立している.治療中止後も長期間,効果が持続する.喘息は,アレルゲンの他,ウイルス感染,運動,気象条件,ストレスなどが複雑に影響しながら病状を形成するが,精度の高い多くの研究によって免疫療法の効果は確認されている.短期間の症状抑制の程度は弱いが,吸入ステロイド減量効果や,季節性鼻炎からの喘息の発症に対する予防効果は,特に小児の領域において注目すべき事象である.免疫療法は,アレルギー反応誘発の危険性のために敬遠されがちで,特に我が国ではあまり関心が払われていないが,アレルギー疾患の根治療法として関心を持ち続けるべきである.