日本小児アレルギー学会誌
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市販加熱殺菌牛乳に含まれるβ-ラクトグロブリンのペプシンおよびパンクレアチンによる消化性と消化後の抗原性の変化
坂井 堅太郎中尾 友宣真鍋 祐之
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1998 年 12 巻 1 号 p. 72-79

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抄録
一般に食品タンパク質のアレルゲン性は, 熱安定性と消化酵素に対する抵抗性に深く関係している. 加熱殺菌方法の異なる市販牛乳 (低温殺菌牛乳 (LTLT), 高温短時間殺菌牛乳 (HTST), および超高温殺菌牛乳 (UTH)) に含まれるβ-ラクトグロブリン (β-LG) のペプシンとパンクレアチンによる消化性と消化後の抗原性の変化を競争阻害ELISA試験とイムノブロット法で検討した. LTLTとHTST中のβ-LGは, ペプシンおよびパンクレアチンに対して強い抵抗性を示したが, UTH中のβ-LGは, これらの消化酵素に対して抵抗性を示さなかった. 牛乳を沸騰水浴中に15分間加温した場合, LTLT中のβ-LGは, これらの消化酵素に対する抵抗性を著しく消失した. これらの結果は, β-LGの消化性から市販加熱殺菌牛乳を選択する場合, LTLTやHTSTよりもUHTが優れている可能性を示唆するとともに, 加熱調理によって牛乳中のβ-LGの胃腸管での消化性が改善されることが推察された.
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