2002 年 16 巻 1 号 p. 99-102
症例は12歳5ヶ月の喘息女児. 従来より梅雨時期に発作が増悪する傾向がありプロピオン酸ベクロメタゾンを吸入していたが, 発作が軽減したため平成11年2月に中止した. 平成11年6月, ヒマラヤ杉とカモガヤ等のイネ科植物が群生する地域の伐採現場を通った約15分後より, 上眼瞼と口唇を中心とした顔面の浮腫, 全身チアノーゼ, 喘鳴を伴う呼吸困難が出現し当院へ緊急受診した. 受診時の意識レベルはJCS III-300で血圧も触知不能であったが, 直ちにエピネフリン, メチルプレドニゾロン等の救急処置を施行し, 当院到着から1時間後に意識は清明, 顔面の浮腫と全身のチアノーゼは消失, 呼吸状態も改善した. 発症の状況と CAP-RAST の結果から, イネ科植物花粉の大量吸入によるアナフィラキシーショックが考えられた. 花粉によるアナフィラキシーショックの報告は稀であるが花粉の大量吸入は重篤なアレルギー症状を起こす可能性が示唆され, 花粉の飛散時期を考慮に入れた注意深い治療管理が必要と思われた.