抄録
1990年から2001年12月までに登録された喘息死180例について, 近年の変化をみるため, 1988~1997年に死亡した157例と1998~2001年に死亡した23例に分けて集計した.
報告症例は1997年から減少傾向にある. 死亡時年齢は1997年以前で11.9±6.8歳, 1998年以降は13.6±9.7歳で, 男女比を見ると1997年以前は97:60, 1998年以降は12:11で男女比が小さくなっていた. 死亡前の喘息重症度を見ると, 前後でそれぞれ軽症は17.9%・13.0%, 中等症は20.5%・21.7%, 重症は29.5%・21.7%, 不明・未記入は32.1%・43.5%であり, 重症と軽症が減少し, 不明・未記入が増加していた.
死亡に関与した要因は, 予期できない急激な悪化が前後を通じて70%で最も多く, 適切な受診の遅れが68%から52%に減少していた. 薬物の過剰投与が喘息死の要因あるいはその疑いがあるとされた症例は22例であり, 1999年以降1例が加わった. 死亡前1ヶ月の薬物療法では, 最近の治療の傾向を反映してか, 吸入ステロイド薬の処方例が増加していた. 喘息死亡例の身長は男子で10例中8例 (80%), 女子は3例中2例 (66.7%) が標準曲線に一致していた. 体重は男子で16例中10例 (62.5%), 女子は9例中6例 (66.7%) に一致していた.