日本小児アレルギー学会誌
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Regulatory mechanisms of leukotriene synthesis and degradation in childhood bronchial asthma
A brief report from the 5th Asia Pacific Congress of Allergology and Clinical Immunology, Seoul (Korea) Oct 12-15, 2002
浜崎 雄平M Zaitsu
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2003 年 17 巻 3 号 p. 317-322

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抄録
システィニルロイコトリエン (cysLTs) はアラキドン酸の5リポキシゲナーゼ代謝物で, 小児気管支喘息の病態の発現に重要な役割を果たしている. cysLTsの合成は外的, 内的な活性物質により分子生物学的機序で制御されていることがこの15年来の研究で明らかになってきた. CysLTsが小児の気管支喘息で重要な役割を果たしているという直接的な証拠は, 患児の大発作時に採取した肺洗浄液中にcysLTsとLTB4の濃度が著しく高値であるということ, 喘息患児の末梢血多核白血球のcysLTsおよびLTB4産生能が, コントロール児よりも有意に高いことによっても示される. このcysLTsおよびLTB4産生能の上昇は, 合成酵素である5リポキシゲナーゼ, LTC4合成酵素, LTA4脱水素酵素の転写もしくは翻訳の活性上昇に由来することが明らかになった. CysLTsの生物学的活性はその分解の速度によっても影響を受ける. LTC4は連続的に作用する2つの酵素, ガンマグルタミルロイコトリナーゼ (GTPRE) とジペプチダーゼ, によってLTD4, LTE4へと連続的に変換される. LTE4は生物学的に活性が低いので, この分解酵素系が活性化されるとcysLTsの活性が影響を受ける. ヒトの培養気道上皮細胞において, GTPREはステロイドにより転写が活性化され, 酵素活性が上昇することが明らかとなった. ステロイドによるGTPRE誘導の機序は, 吸入ステロイドが喘息に有効である理由のひとつであると考えられる. このように, ロイコトリエンの代謝に関与した多くの酵素は分子生物学的な制御を受けており, この制御は喘息の病態に深く関与していると考えられる.
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© Japanese Society of Pediatric Allergy and Clinical Immunology
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