日本小児循環器学会雑誌
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原著
アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は川崎病モデルマウスにおける冠動脈炎を抑制した
菅沼 栄介松田 晋一中村 英明関根 佳織高倉 一郎
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2012 年 28 巻 5 号 p. 268-273

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抄録

背景:川崎病における冠動脈病変は, 細胞浸潤などの他に細胞外基質の破壊亢進が深く関与している. 一方, アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は, 降圧作用以外に細胞外基質の破壊抑制効果を合わせ持つが, これまでARBが川崎病に有効であるというデータはない.
方法:4週令の雄のC57/BL6マウスにLCWE(Lactobacillus casei wall cell extract)を0.5 mg腹腔内投与した群(n=10)とPhosphate-Buffered Saline(PBS)を投与した群(n=10), さらにLCWE+ARB(100 mg/l)を投与した群(n=10)の3群を作製し8週令の時点で, 冠動脈のHE染色を行い血管炎の程度を検討した. さらにReal-time PCR法を用いて大動脈起始部でのMMP-2, MMP-9, IL-6 mRNAの発現量をみた(各n=5).
結果:組織学的検討ではLCWEにより冠動脈炎が惹起され, ARB投与により炎症とともにマクロファージの浸潤も抑制された. Real-time PCR法ではLCWE投与群でのmRNAは, PBS群と比較して, MMP-2, MMP-9, IL-6はすべて高値を示し, ARB投与によりMMP-9とIL-6はともにわずかな抑制をみた.
結論:ARBは川崎病モデルマウスにおいて冠動脈周囲へのマクロファージの浸潤を抑えることで冠動脈炎を抑制した. 今後ARBが治療的介入目的で利用し得る合理的な薬剤の1つとなることが期待される.

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© 2012 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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