日本小児循環器学会雑誌
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巻頭言
Review
  • 門間 和夫, 前野 泰樹
    2020 年 36 巻 4 号 p. 270-276
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    Bis-diamineによりラットに生じる奇形はヒト染色体22q11欠失症候群に生じる疾患に近似しているので,その胎仔を全身急速凍結法,凍結ミクロトーム,実体顕微鏡(Wild M400)を用いて0.5 mm毎の胸部横断面(背腹右左断面)を頭側から腹側に連続写眞で記録し,論文および図譜として既に発表した.今回は未発表のFallot四徴症(0.25 mm毎の腹背右左断面)2症例と対照正常心臓例の図譜を提示する.Fallot四徴症-1は閉鎖に近い高度の肺動脈弁狭窄と肺動脈低形成を伴い,大動脈弁が心室中隔に騎乗して主に右室から出ている.右室流出部と主肺動脈の低形成に伴い左前方に回転位置する右大動脈洞から太い単冠動脈が高位起始して右冠動脈と左冠動脈に分岐する.さらに右鎖骨下動脈の起始異常と胸腺欠損が合併している.Fallot四徴症-2は肺動脈弁欠損を合併し,両心室は拡大し,少量の心嚢水が貯留している.主肺動脈が拡大し気管分岐部を圧迫閉塞している.左右の肺動脈も肺門部で下行大動脈の2倍に拡張しているが,併走する気管支は開いている.胸腺は小さい.これらの天然色心臓血管画像は胎児エコー観察者の正確な解剖学的形態評価,特に胸郭横断面での四腔断面から3血管断面にかけて心室中隔欠損や右室流出路の形態を判断できるようになるために有益であろう.

原著
  • 石踊 巧, 堀米 仁志, 矢野 悠介, 嶋 侑里子, 野崎 良寛, 石川 伸行, 林 立申, 高橋 実穂, 村上 卓, 塩野 淳子, 高田 ...
    2020 年 36 巻 4 号 p. 277-284
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    背景:近年,本邦で急性リウマチ熱(ARF)を経験する機会はまれで,新規発症例の報告は毎年5~10例であるが,診断・治療が遅れると心不全を来すこともある重篤な疾患である.

    方法:1994~2018年に我々の施設で診断された心炎を伴うARF 6例の臨床経過と予後について,診療録から後方視的に検討した.

    結果:診断時年齢は3~13歳(中央値8.5歳),女児3例であった.初発症状は4例が発熱と関節症状,1例が関節症状,1例が心不全に伴う息切れと易疲労感であった.初診からARFの診断に至るまでの期間は3日~4年10か月(中央値11.5日)で,関節炎として他の診療科で治療された例は診断が遅れる傾向があった.Jones診断基準の大項目で認められたのは心炎,多発関節炎のみであった.弁膜炎としては大動脈弁閉鎖不全(AR)が5例に,僧帽弁閉鎖不全(MR)が3例に認められ,2例は両者を合併した.いずれもプレドニゾロン,アスピリン,抗菌薬で治療され(予防投与含む),1~15年(中央値9年)の経過観察期間でMRは改善したが,ARは残存し,2例は弁置換術が必要となった.ARFの再発は認められなかった.

    結論:今回の検討では,初期に関節症状が目立ち,心炎の診断が遅れて重症化する例があった.溶連菌感染に関連した多発関節炎の診療においては,小児循環器科医による心炎のスクリーニングが重要であると考えられた.

  • 加藤 基, 加藤 怜子, 渡辺 あずさ, 渡邊 彰二
    2020 年 36 巻 4 号 p. 287-293
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    背景:術後乳び胸に代表される中枢性リンパ管疾患は,胸管などの中枢リンパ管に起因したリンパ流の障害で,難治化が問題となる.新たな概念や治療法が報告されるなかで,特殊治療を専門とする一部の医師に総合的な相談が寄せられている.本研究は,中枢性リンパ管疾患に関するコンサルトの実状を明らかにすることを目的とした.

    方法:2016年5月からの4年間に,本疾患の診療に関する相談案件を対象とした.相談元病院の地方区分,病院種類,医師の専門科,相談症例の特徴,主たるコンサルト内容を後方視的に検討した.

    結果:対象は全38件であった.経年的に件数は増加し,相談元の内訳として関東地方,大学病院,小児循環器関連医師が多く,術後胸水の症例が最も多かった.一方で意外なことに,地方や病院種類・専門科にかかわらず,手術の執刀依頼よりも治療方針そのものに関する相談が多くみられた.

    結論:中枢性リンパ管疾患の診療にあたり,治療戦略の構築が重要と考えられた.われわれの診療フローチャートを一案として示す.

  • 鈴木 康太, 金 成海, 石垣 瑞彦, 佐藤 慶介, 芳本 潤, 満下 紀恵, 新居 正基, 田中 靖彦
    2020 年 36 巻 4 号 p. 294-305
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    背景:動脈管依存性肺循環の先天性心疾患(congenital heart disease with duct-dependent pulmonary circulation: CHD-DPC)に対する初回の姑息的治療は,Blalock-Taussig短絡術(Blalock-Taussig shunt: BTS)が主流であり,動脈管ステント留置術(ductal-stenting: DS)はまだ少数ではあるが,周術期のリスクが高い症例に対しては有効な治療法であると考えられる.

    方法:当院でCHD-DPCに対しDSを施行した4症例を対象に,診療録から後方視的に検討した.また,同疾患群に対しBTSを施行した76症例と,周術期合併症や死亡率に関して比較検討を行った.

    結果:DSは全症例で成功した.合併症として2例で治療直後に高肺血流性心不全のため内科的治療を要し,1か月後にステント狭小化のためステント内再留置を行った.1例でアプローチ部の右大腿動脈で閉塞をきたし,ステント再留置の際に大腿動脈のバルーン拡張も追加した.予後に関して,両方向性Glenn手術に到達し現在Fontan型手術待機中が1例,Rastelli手術到達が2例.18トリソミーを伴った1例で在宅移行が可能となった.BTS症例のうち,心外先天異常や染色体異常を有する群では,DS症例と比較して周術期合併症の発生率や死亡率が高い傾向にあった.

    考察:周術期リスクが高い症例に対する初回の姑息的治療として,DSは有効な選択肢と考えられる.ステントサイズやアプローチの選択などの最適化により,さらなる成績向上の余地がある.

  • 三井 さやか, 福見 大地, 羽田野 爲夫, 大島 康徳
    2020 年 36 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    背景:近年エコーの精度向上によりsmall coronary arteriovenous fistula (CAVF)の指摘が増えているが自然経過の報告は少ない.

    方法:2009年1月~2019年12月心エコーでCAVFを指摘された18歳以下の児の初診時月齢,性別,転帰,冠動脈走行等を診療録から後方視的に検討した.

    結果:65名(男児34名,女児31名)が対象.初診時月齢中央値は4か月(0~86)で平均追跡期間は42か月(0~215).当該期間に31名,48%に自然閉鎖を認めた.閉鎖率に男女差はないが,起始が左/右冠動脈では右冠動脈の,開口部が肺動脈内/心室内では心室内の閉鎖率が高かった(p<0.05).治療例は1例で1歳4か月時コイル塞栓を施行された.経過中虚血や心不全を認めた症例はなかった.

    結論:CAVFの自然閉鎖は48%にみられた.右冠動脈起始あるいは開口部が心室内では早期の閉鎖率が高く,起始や流入部位による違いは経過をフォローする上で有用である.

  • 秋山 直美, 落合 亮太, 檜垣 高史, 賀藤 均, 城戸 佐知子, 丹羽 公一郎, 中西 敏雄, 白石 公
    2020 年 36 巻 4 号 p. 313-320
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    背景:成人先天性心疾患患者にとって社会的自立は課題となっている.社会的自立にはさまざまな指標があるが,本研究では親と離れて暮らすことを自立の一指標とし,それに関連する要因を検討した.

    方法: 20歳以上の患者会所属者を対象に自記式質問紙を配布し回答を得た.親と離れて暮らすことに関連する要因についてロジスティック回帰分析を使用して分析を行った.

    結果:対象者1,626名のうち373名から有効回答を得た.親と離れて暮らしている者は135名(36.2%),親と一緒に暮らしている者は237名(63.5%)であり,就労率は61.9%であった.全対象者,および就業者を対象としたロジスティック回帰分析では,親と離れて暮らすことに関連する要因として,疾患重症度,学歴,雇用状況が挙げられた.

    結論:成人先天性心疾患患者が親と離れて暮らすには,疾患重症度が低いこと,学歴が高いこと,雇用状況が正規雇用であることが重要であると示唆された.

症例報告
  • 佐藤 啓, 藤田 修平, 臼田 和生, 廣野 恵一, 畑崎 喜芳
    2020 年 36 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    多源性心房頻拍は乳児期に発症し,頻拍がインセサントとなることで,不整脈誘発性心筋症に陥ることがある.乳児では自覚症状を訴えることがなく,症状が進行してから発見されることが多い.症例は4か月の男児.4か月健診での脈の不整および頻脈を指摘され紹介となった.来院時,顔色不良,末梢冷感を認めた.胸部レントゲンでは心胸郭比65%,肺うっ血を伴っていた.心電図では多源性のP波を認め,HR 220~240 bpmの不規則な心拍であり,多源性心房頻拍と診断した.心臓超音波検査では著明な心機能低下と左室拡大(左室拡張末期径30.0 mm, 130% of Normal)を認めた.まず頻拍の停止,心拍数低下を目的にアミオダロンを静注投与したところ心拍数の低下は認めたが,血圧低下を来したため,気管挿管,カテコラミン投与で治療を開始した.頻拍はアミオダロン,ランジオロール,アプリンジン投与で洞調律となった.洞調律復帰後に徐々に心機能は改善し,不整脈誘発性心筋症と診断した.抗不整脈薬による頻拍のコントロールが可能であれば,不整脈誘発性心筋症は心機能の改善が期待できる.

  • 古賀 玲奈, 佐藤 智幸, 松原 大輔, 鈴木 峻, 岡 健介, 関 満, 片岡 功一, 山形 崇倫
    2020 年 36 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    バルサルバ洞動脈瘤は先天心奇形に合併することもあるが,小児では極めて稀な疾患であり,また胎児期から破裂をきたした報告はない.今回,胎児期よりバルサルバ洞動脈瘤の破裂を合併した左心低形成症候群の一例を経験した.症例は女児.胎児心エコー検査で心室中隔欠損を伴った非典型的な左心低形成症候群(大動脈弁閉鎖,僧帽弁閉鎖,痕跡的左室)と診断され,中等度の三尖弁逆流の合併が疑われた.しかし,出生後の心エコー検査では三尖弁逆流は認めず,大動脈基部から右房に短絡する血流を認め,バルサルバ洞動脈瘤破裂の合併を疑った.精査として末梢動脈からの逆行性大動脈造影を施行し,大動脈無冠尖のバルサルバ洞の下方突出およびそこから右房に短絡する血流を認め,バルサルバ洞動脈瘤破裂と診断した.バルサルバ洞動脈瘤は胎児期でも破裂をきたすことがあり,右房への短絡血流は三尖弁逆流と見誤ることがある.バルサルバ洞動脈瘤破裂の確定診断にあたり,逆行性大動脈造影は有用な選択肢である.

  • 青木 晴香, 鉾碕 竜範, 渡辺 重朗, 中野 裕介, 岩本 眞理, 相庭 武司
    2020 年 36 巻 4 号 p. 334-343
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    Long QT syndrome type 8 (LQT8)は心筋CaチャネルのαサブユニットをエンコードするCACNA1C遺伝子異常が原因で,心電図上QT延長に加えて,合指,先天性心疾患,精神発達遅滞など多臓器に所見を認めるTimothy症候群が知られている.今回我々は心外合併症のない非Timothy症候群型LQT8の親子例を経験したので報告する.症例は18才男性,小学校1年生の学校心臓検診でQT延長を指摘され,9歳時に遺伝子検査を提出したが,LQT1~3の遺伝子変異は認めなかった.18歳時の運動負荷心電図で機能的2 : 1房室ブロックを認めたことを契機に改めて全エクソン遺伝子解析を実施したところ,本患者と父親にLQT8として既報のCACNA1C遺伝子バリアントが同定された.本患者に対してプロプラノロール,メキシレチン,ベラパミルの薬剤負荷試験を施行し,メキシレチン投与後にQT延長の改善を認めた.LQT8に対する明確な治療指針はないが,本症例ではメキシレチンの有効性が示唆された.LQT1~3の遺伝子変異が同定されなかった症例でも,QT延長に加え機能的2 : 1房室ブロックやT wave alternansを認めた場合はLQT8の可能性を疑う必要がある.

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