2012 年 28 巻 6 号 p. 306-310
背景:扁桃肥大は小児の上気道狭窄の最多原因であり, 上気道狭窄による低酸素血症, 高二酸化炭素血症は, 肺動脈圧の上昇, 慢性肺性心を惹起させる可能性からFontan循環に悪影響を及ぼす可能性がある.
対象:1993年から2009年までの, いわゆるFontan trackにのった全207例中, 扁桃腺摘出術(以下, 扁摘)を行った9例.
方法:扁桃肥大を合併し上気道狭窄が疑われるFontan candidateおよびFontan術後患者に対する扁摘の臨床的効果を, 扁摘前後の, 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2), 扁摘前後に心臓カテーテル検査を行った4例での, 動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2), 平均肺動脈圧(mPAP)を用いて検討した.
結果:9例中8例はFontan手術に到達し, 1例は両方向性Glenn術後Fontan待機中である. 扁摘前後のSpO2は, 術前81±7%から術後85±6%に, 全例で上昇した. 扁摘の前後でPaCO2は, 術前41±4 mmHgから術後37±4 mmHgに, 1例を除いて低下し, mPAPは, 術前22±12 mmHgから術後13±4 mmHgに, 全例で低下した.
結論:扁桃肥大を合併し上気道狭窄が疑われるFontan track症例に対する扁摘は, 肺血管抵抗を低下させた可能性があり, Glenn・Fontan循環を改善させることが示唆された.