日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
治療中にバンコマイシン感受性が変化した難治性MRSA 感染性心内膜炎の例
有馬 慶太郎土屋 恵司石垣 瑞彦今田 義夫
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2013 年 29 巻 6 号 p. 360-366

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抄録

症例は心室中隔欠損(VSD)に対し肺動脈絞扼術を先行された6ヵ月男児.拡大した右肺動脈による気管圧迫のためdying spellを起こし,緊急で心内修復,大動脈吊上げ術を施行.術後,末梢静脈ライン関連血流感染から三尖弁に疣腫を伴う感染性心内膜炎を発症した.バンコマイシン(VCM)を軸とした治療を開始したが,検出されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のVCMの最小発育阻止濃度(MIC)が途中1から2μg/mL に変化し菌血症も遷延したため,heterogeneous vancomycin intermediate Staphylococcus aureus(hVISA)の存在を疑い,テイコプラニン(TEIC)に変更,さらにアルベカシン(ABK),リネゾリド(LZD)を併用し菌血症は改善した.治療中薬物副作用としては一時的な網赤血球減少と貧血を認めたのみであった.耐性黄色ブドウ球菌による難治性感染性心内膜炎では適切な薬物モニタリング(TDM)の下,多剤併用治療も選択肢となる.板を形成し血管平滑筋層のエラスチン線維を形成することから,今回の研究は出生後の血中酸素濃度の上昇がエラスチンの分泌を減少させ,出生後の動脈管構造のリモデリングにも影響している可能性を示唆するものである.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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