日本小児循環器学会雑誌
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原著
先天性心疾患の胎児診断における母親への心理的影響:多施設調査結果報告
河津 由紀子植田 紀美子西畠 信石井 陽一郎満下 紀恵川滝 元良高木 紀美代竹田 津未生
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2014 年 30 巻 2 号 p. 175-183

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抄録

背景:近年,急速に増加している先天性心疾患の胎児診断における母親への心理的影響の研究として,それら母親]の心理的状況やニーズの把握が必要となっている.
目的:胎児心疾患の診断を受けた母親に対するアンケート調査により胎児診断前後のニーズや心理状況を把握すること.
方法:全国6施設にて胎児診断を受けて現在通院中の心疾患児をもつ母親を対象とし,日本版PSI育児ストレスインデックス(Parenting Stress Index,以下「PSI」)を中心とした自記式質問票による調査を行った.調査は各施設倫理委員会の承認を得て実施した.
結果:回答のあった解析対象者は241名.PSIスコアは「子どもに問題を感じる」「退院後の気落ち」で高く(=ストレスが高い),「夫との関係」では低かった.また,PSIスコアが高い母親は有意に「医師以外のスタッフの立ち会い」を必要とした(P=0.023).PSIの高い母親のほうが有意に「不安になった時に相談できること」を必要とし(P=0.029),有意に「ピアカウンセリング」を必要とした(P=0.048).重症心疾患児の母親のPSIスコアに有意差は認めなかった.
結論:胎児診断を受けた母親のストレスは子どもに対しては強かったが,夫とは育児をより協力しあう関係と推測された.ストレスの強い母親に対しては,検査中やその後に相談できるスタッフやピアカウンセラーが必要という結果であった.また心疾患が重症であるからストレスが強いわけではないことも判明した.今回の調査により胎児心疾患の診断を受けた母親に対する支援の方向性が明らかにできた.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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