日本小児循環器学会雑誌
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原著
Hybrid治療における術前治療戦略の重要性
井上 奈緒安河内 聰瀧聞 浄宏松井 彦郎森本 康子渡辺 重朗森 啓充原田 順和坂本 貴彦小坂 由道渕上 泰
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2014 年 30 巻 5 号 p. 572-579

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抄録
背景:循環器小児科医と心臓血管外科医の共同作業であるHybrid治療を行うためにはHybrid suiteで行うことが理想であるが,当院にはない.このような場合,Hybrid治療を成功させるには術前の綿密な治療計画の立案が不可欠と考えられる.
目的:Hybrid治療における治療戦略構築の重要性を検討する.
対象と方法:当院でHybrid治療を施行した7例.男児4例,年齢7日〜12歳,体重3.4〜23.5 kg.疾患の内訳は左肺動脈閉塞のFontan適応症例が4例とCantrell症候群に合併した左Blalock-Taussig shunt(以下BTS)後の三尖弁閉鎖,主要体肺動脈側副血行(major aortopulmonary collateral arteries:MAPCA)を伴った肺動脈閉鎖(PA)・心室中隔欠損症(VSD),大血管転位症がそれぞれ1例ずつであった.カルテ記載より後方視的に調査し,Hybrid治療を成功させるために必要なHybrid治療の方法,適応判断,術前の治療戦略の立案と施行の成否について検討した.
結果:Hybrid治療の内訳は,①右側開胸下TCPC施行前に左BTSに対してコイル塞栓術を施行した症例が1例,②到達困難な細いMAPCAに対するステント留置術が1例,③血栓閉塞した肺動脈に対するステント留置術が4例,④開胸下での心房間交通拡大術が1例.全例において画像診断に基づいた検討を十分に行い,治療に携わる小児循環器医師,心臓血管外科医師,麻酔科医師,ICU医師,看護師,臨床工学士,放射線技師全員が集まり,治療行程の十分な確認を行った.①はより少ない侵襲でTCPCが行われ,②はRastelli手術に到達できた.③はすべて片肺循環を回避でき,④は低酸素が改善した.
結語:Hybrid Suiteを持たない施設では,手術室からカテーテル室への移動および感染対策や精度の高い血管造影装置や造影剤の注入装置がない状態でのカテーテル操作が必要となる.十分な術前治療戦略の検討と良好なチームワークがこれらの問題点を乗り越える助けとなり,Hybrid治療を成功させることが可能である.
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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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