2020 年 36 巻 4 号 p. 270-276
Bis-diamineによりラットに生じる奇形はヒト染色体22q11欠失症候群に生じる疾患に近似しているので,その胎仔を全身急速凍結法,凍結ミクロトーム,実体顕微鏡(Wild M400)を用いて0.5 mm毎の胸部横断面(背腹右左断面)を頭側から腹側に連続写眞で記録し,論文および図譜として既に発表した.今回は未発表のFallot四徴症(0.25 mm毎の腹背右左断面)2症例と対照正常心臓例の図譜を提示する.Fallot四徴症-1は閉鎖に近い高度の肺動脈弁狭窄と肺動脈低形成を伴い,大動脈弁が心室中隔に騎乗して主に右室から出ている.右室流出部と主肺動脈の低形成に伴い左前方に回転位置する右大動脈洞から太い単冠動脈が高位起始して右冠動脈と左冠動脈に分岐する.さらに右鎖骨下動脈の起始異常と胸腺欠損が合併している.Fallot四徴症-2は肺動脈弁欠損を合併し,両心室は拡大し,少量の心嚢水が貯留している.主肺動脈が拡大し気管分岐部を圧迫閉塞している.左右の肺動脈も肺門部で下行大動脈の2倍に拡張しているが,併走する気管支は開いている.胸腺は小さい.これらの天然色心臓血管画像は胎児エコー観察者の正確な解剖学的形態評価,特に胸郭横断面での四腔断面から3血管断面にかけて心室中隔欠損や右室流出路の形態を判断できるようになるために有益であろう.