2023 年 39 巻 1 号 p. 31-36
症例は12歳の男児で,出生後,大動脈縮窄症,心室中隔欠損症と診断され,生後1か月時に左側開胸にて拡大大動脈弓吻合法による手術が施行された.術後再狭窄を認め,バルーン血管形成術を5か月,3歳時に施行された.11歳時の精査で全長4 cmにわたる最小径5 mm, 圧較差50 mmHgに狭窄が進行した.また,大動脈弁逆流の進行も認めた.再手術に伴う大動脈周囲の高度な癒着,選択的脳分離体外循環の確立,大動脈弁閉鎖不全症と心室中隔欠損に対する外科的治療,これらの要素から胸骨正中切開と左前側方開胸を用いた下行大動脈人工血管置換,大動脈弁置換,心室中隔欠損閉鎖術を施行した.術後の上下肢圧較差は消失した.胸骨正中切開および左開胸アプローチは手術侵襲が大きいものの,安全に選択的脳分離体外循環を確立でき,解剖学的修復という観点から大動脈縮窄の根治性が高く,また心内修復も併施可能な手法である.