日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
頸部カニュレーションによる体外式膜型人工肺装着中の患児に対して,合併症なく早期理学療法が施行可能であった一例
金田 直樹 酒井 渉茶木 友浩名和 智裕
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2024 年 40 巻 1 号 p. 57-63

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抄録

小児重症患者に対する体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation: ECMO)装着中の早期理学療法に関する報告は本邦ではまれである.その理由として,理学療法中の送脱血管の先端位置の移動や計画外抜去のリスクが考えられる.頸部カニュレーションによるECMO装着中の患児に,合併症なく早期理学療法を施行可能であった一例の経過と,具体的な早期理学療法内容を報告する.症例は既往のない2歳,14.3 kgの男児で,頻脈,頻呼吸を認め,精査の後に頻拍誘発性心筋症と診断された.第2病日に心不全増悪かつ低心拍出状態に対し頸部カニュレーションによるECMOを導入した.関節可動域運動,呼吸理学療法に加え,ECMOの送脱血管の挿入角度の変化を脱血圧と送血流量を見ながら注意し,楔状のウレタンフォームを用い側臥位の体位ドレナージを行った.早期理学療法の合併症はなく,第4病日にECMOを離脱した.第11病日抜管し,第14病日に小児集中治療室を退室した.頸部カニュレーションによるECMOを要した小児急性・重症心不全患者の早期理学療法は,送脱血管の位置や角度を注意する事で合併症なく施行可能であった.

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