2025 年 41 巻 1 号 p. 51-57
Avalon Elite® Bi-Caval Dual Lumen Catheter(Avalon DLC)は1本のカニューレでV-V体外式膜型人工肺(Veno-venous extracorporeal membrane oxygenation: V-V ECMO)の送血と脱血が可能なデバイスであるが,先天性心疾患児に対する使用報告はない.症例はCantrell症候群,ファロー四徴症,左上大静脈遺残と診断された生後3か月,体重3.5 kgの男児.臍帯ヘルニア,横隔膜ヘルニアと気管軟化症に対して多期的腹壁閉鎖術,横隔膜縫縮術と気管切開術を施行した.生後3か月時から低酸素血症が顕在化し,心臓MRI検査で肺体血流比=0.4と低肺血流状態であり,Blalock–Taussig shunt手術が必要と判断した.腹壁の術創と気管切開孔が胸骨と近接し術後縦隔炎が懸念されたため,正中切開を選択せず左側開胸での手術を計画した.しかし,術側肺の圧排が更に酸素化を悪化させるため,手術執刀前にV-V ECMOの導入を計画した.静脈の解剖学的特徴から,カニューレを経皮的に挿入できる部位は右内頚静脈のみであった.右内頸静脈からAvalon DLC 13 Frを挿入してV-V ECMOを使用し,良好な酸素化を得た.手術終了時にV-V ECMOを合併症なく離脱することが可能であった.先天性心疾患と多発奇形がある場合,バスキュラーアクセスに制限があることがあり,導入時の選択としてAvalon DLCは一候補になりうる.