抄録
わが国における障害者歯科診療での行動調整,口腔衛生と歯科治療に関する考え方と方法は,この数 十年のあいだに大きく変化してきていると認識されている。本総説は,第47 回日本小児歯科学会学術大会で論じた「臨床講演4」の内容を,以下のような5 つのトピックについて,その変化と潮流を臨床的視点からまとめたものである。1 .スペシャルニーズのある患者に対する行動調整法の変化,物理的対応から心理学的あるいは薬理学的対応へ。2 .学習障害(LD),注意欠如(欠陥)・多動性障害(ADHD)および自閉症スペクトラム(ASD)のある小児の増加とその歯科保健上の重要性。3 .重症心身障害児の長寿化や虚弱高齢者の増加に伴って生じている歯科における新たな問題点。4 .多くの障がい児は歯科的に健康な状態を保たれるようになってきているが,一方で,少数ではあるがきわめて重症の歯科疾患を有する障害児が存在するという二極化した現象。5 .スペシャルニーズのある子どもの歯科疾患および口腔機能不全に対する,保健医療従事者による超職種的なアプローチの重要性。