小児歯科学雑誌
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総説
  • 武井 浩樹
    原稿種別: 総説
    2021 年 59 巻 2 号 p. 45-50
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル 認証あり

    ヒスタミンH3受容体は自己受容体であり,ヒスタミン作動性ニューロンの終末からのヒスタミン放出を調節している。島皮質を含む大脳皮質にはH3受容体が広範囲に分布しているが,その役割や機能はあまり知られていない。そこで,本研究では島皮質におけるH3受容体を介したシナプス伝達機能を解明することを目的とした。

    大脳皮質を含む急性脳スライス標本を作製し,ホールセルパッチクランプ法を行った。複数のニューロンより同時にホールセル記録を行い,単一性興奮性シナプス後電流(uEPSP)と単一性抑制性シナプス後電流(uIPSC)を記録した。H3受容体の作動薬であるR-α-methylhistamine(RAMH)の投与により,uEPSCとuIPSCの振幅は減少した。H3受容体の拮抗薬であるJNJ 5207852またはチオピラミドを前投与するとRAMHによるuEPSC/uIPSCの振幅減少はみられなかった。チオピラミド単独投与はuIPSCの振幅を増加させた。また,興奮性微小シナプス後電流と抑制性微小シナプス後電流は,RAMH投与により発生頻度が減少した。以上より,H3受容体がシナプス前終末からの神経伝達物質の放出を抑制することが示唆された。

    島皮質でのシナプス前細胞におけるH3受容体による神経伝達物質放出の抑制は,味覚や内臓感覚などの感覚情報処理の調整に関与していると考えられる。

原著
  • 合田 義仁, 稲田 絵美, 村上 大輔, 嘉ノ海 龍三, 山﨑 要一
    原稿種別: 原著
    2021 年 59 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル 認証あり

    近年,小児期の齲蝕は統計学上経年的に減少傾向を示している。一方で,多数歯齲蝕により口腔崩壊している子供が少なからず存在し,ほとんど齲蝕のない子供との二極化が問題となっている。子供を取り巻く環境は家族形態等の多様化により複雑化してきているため,自身での口腔衛生管理が難しい乳歯列期の小児の齲蝕罹患は,環境の影響を大きく受けていると考えられる。そこで今回,生活環境と齲蝕との関連について調査した。

    対象は,2009年から2016年の期間中,当科に初診で来院した3歳から5歳の乳歯列期小児475名(平均年齢4歳4か月)とした。初診時の生活習慣調査票より,「間食状況」「家庭環境」「口腔衛生習慣」等の生活環境について調査し,口腔内診査表,デンタルエックス線写真,診療記録を基に齲蝕罹患状況(dmf歯数)を算出し,統計学的に検討した。

    その結果,小児の齲蝕罹患は,間食回数,保護者の就労状況,出生順,仕上げ磨きの状況,歯磨きの回数,フッ化物塗布経験と関連性があることが明らかとなった。一方,祖父母との同居の有無,患児の就園状況は齲蝕罹患の要因に該当しない可能性が示された。

    以上より,子供の生活習慣や子供を取り巻く生活環境が,齲蝕罹患に影響を及ぼすことを統計学的に示すことができたと考えられる。

  • 関野 貴大, 岡田 英俊, 島村 和宏
    原稿種別: 原著
    2021 年 59 巻 2 号 p. 59-70
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル 認証あり

    乳臼歯隣接部の齲蝕は,歯頸部付近で頰舌的に拡がることが多い。歯質の薄い乳歯の修復で,歯質保護と修復物破損防止のために側壁部への工夫が必要だが,内開き窩洞を推奨する根拠は見当たらない。本研究では隣接面を含む複雑窩洞で,切削量を抑制しつつCRの辺縁破折の可能性低減の一助とすべく,窩洞条件およびCRの充塡条件を検索する目的で,内開き窩洞の形態,側壁の幅とCRの種類について圧縮強度をもとに比較検討した。

    ①フロアブル型6種ペースト型3種のCRについて,3群(GF群,BK群,UN群)に分けて圧縮強さ,弾性率,間接引張強さを測定しCR間の有意差を検討した。

    ②隣接面の内開き窩洞(S1,F1,F2)を設定し,CRの圧縮強さによりCR間,窩洞間の有意差を検討した。

    ③窩洞破断面をSEMにて観察を行った。

    その結果,①内開き窩洞の窩洞幅が拡がるにつれフロアブル型が圧縮強さにおいて有意に高値を示し,単一材料での積層充塡におけるフロアブル型の有用性が示唆された。②各CR群で窩洞が大きくなるにつれ,窩洞内のCRの破断荷重が上昇傾向を示した。側壁部のCR厚さ,体積が破折防止に影響していることが示唆された。③CRの間接引張試験結果と窩洞を用いたCR圧縮試験の結果が近似していたことから間接引張強さの大きいCRの選択が破断防止に寄与していた。

    確実に齲蝕を除去したうえでの内開き窩洞はCRや歯質破折防止につながることが示唆された。

  • 加藤 まゆこ, 前田 彩子, 西見 光彦, 岩寺 環司, 岩寺 信喜, 吉原 俊博, 八若 保孝
    原稿種別: 原著
    2021 年 59 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル 認証あり

    暦年齢は出生時からの時間の経過を表しており,発育の度合いが異なる個人を時間経過として一律に評価するものである。骨年齢や歯年齢は生理的年齢と呼ばれ,各臓器の発育度合いから個人の成長の段階を示すものである。暦年齢,骨年齢,歯年齢の関係性を明らかにすることにより個人の発育のより正確な予測が可能と考えられる。そこで本研究では学童期初期(6歳から8歳)の小児を対象に,骨種,歯種ごとに発育段階を点数化し,総計をそれぞれ骨の成熟度,歯の成熟度として,その増加量を観察し,暦年齢,骨年齢,歯年齢間の関係性を検討した。

    調査の結果,いずれの骨種も増加量が異なり,女児のほうが男児より骨の成熟度が進んでおり,男女とも尺骨の増加量が最も大きい傾向がみられた。歯種別では,いずれの歯種も増加量が異なり,女児のほうが男児より成熟度が進んでいた。また,男女とも7歳から8歳にかけて下顎第二大臼歯の成熟度が進んでいた。さらに,暦年齢と骨年齢間,暦年齢と歯年齢間,骨年齢と歯年齢間には相関関係がみられた。以上のことから歯の成熟の観察をすることで,個人の成長度合いを詳細に予測することができる可能性が示唆された。

  • 船山 ひろみ, 齊藤 桂子, 森川 和政, 仲野 和彦, 飯沼 光生, 清水 武彦, 下村-黒木 淳子, 馬場 篤子, 内川 喜盛, 島田 ...
    原稿種別: 原著
    2021 年 59 巻 2 号 p. 80-94
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル 認証あり

    教育問題検討委員会では,全国29歯科大学・大学歯学部の小児歯科学の講義を担当する講座を対象に,平成30年度版歯科医師国家試験出題基準の小児歯科学分野における必修の基本事項,歯科医学総論および各論の大・中・小項目の内容に関してのアンケート調査を行った。調査の結果,現状の必修および歯科医学総論の出題基準には,少なからず問題のあることがわかった。歯科医学各論に関しては,必修や総論に比べ,より具体性の高い出題基準になっていることが窺われた。必修・歯科医学総論および各論において,各々の小項目の記載がない中項目(以下,中項目とする)および小項目が小児歯科学分野の国家試験出題基準に該当するかの問いに対しては,「該当する」との回答が50%未満の中項目あるいは小項目が50%以上を占める大項目が多数認められた。

症例報告
  • 茂木 智子, 志村 菜摘, 藤田 茉衣子, 浅里 仁, 木本 茂成
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 59 巻 2 号 p. 95-103
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル 認証あり

    舌小帯切除術前後の口腔筋機能療法(Oral Myofunctional Therapy,以下MFT)は,舌の機能改善および小帯切除後の瘢痕による後戻り防止には欠かせないものとなっている。今回,舌小帯付着異常を有する3兄弟【症例1:兄10歳11か月,症例2,3:双子の弟(A,B)8歳6か月】に対し,同時期に舌小帯切除術を実施し,術前ならびに術後に舌挙上訓練を中心としたMFTを行った。

    術後MFTを行うことにより3例ともに舌の可動域,舌小帯伸展量は改善した。舌突出癖が顕著であった症例2と症例3は,術後のMFT終了時には嚥下時,発音時の舌突出癖の減少が認められた。症例1は舌の随意運動障害が軽度で舌小帯切除術を回避できる可能性があったが,術前のMFTで舌小帯付着位置の舌運動を制御する能力が改善しなかったため,舌小帯切除術を行い,術後のMFTによって舌背全体の挙上力と運動能力を獲得した。

    本来,個々の性格や舌小帯の形態・舌運動や筋力に合わせてMFTの項目を設定し,個別に指導を行うことが望ましいが,今回は同様の指導内容により3名の訓練を同時期に行うことで,来院回数・指導時間の短縮化と訓練内容の単純化および,保護者の負担軽減を図ることができた。さらに,兄弟3名が同じ内容の訓練に取り組むことでモチベーションの維持が可能となった。

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