抄録
先天性表皮水疱症の3 歳児を5 年間にわたり口腔ケアを行った。初診時,プラークコントロールは不良で,多数歯に重症齲蝕を認めた。加えて歯科診療に対する不安が強く,診療は困難をきたした。治療方針を(1)歯科診療に対する協力性の向上(2)口腔衛生の改善(3)齲蝕の進行抑制とし,2 週間に1 回の間隔で来院させた。Tell Show Do 法(TSD)などで行動変容を行い,使用する歯ブラシを加工する等の工夫,診療室でのフッ化物塗布,家庭でのフッ化物洗口等を行った。その結果,プラークの付着が減少し,健全な永久歯が萌出中である。また,初診時には歯冠崩壊のため咀嚼が困難であったが,永久歯の萌出に伴う咬合部位の増加により,食事内容や量が増加し栄養状態もよくなった。患児と信頼関係を築き,両親の理解や協力を得る事で口腔ケアが容易となり,健全な永久歯の萌出を迎えることができた。