小児歯科学雑誌
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有限要素法による乳前歯外傷時の応力解析
-下顎乳中切歯歯根吸収程度による影響について-
高松 恒美嘉藤 幹夫大東 道治
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1996 年 34 巻 5 号 p. 1069-1080

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抄録

小児期の乳歯の外傷は,上顎前歯だけではなく下顎前歯にも発現する。また,乳歯根の吸収程度により損傷程度が異なると考えられる。そこで,下顎乳中切歯の外傷について,乳歯根吸収程度の相違により下顎乳中切歯,歯周組織,下顎骨および後継永久歯歯胚がどのように影響を受けるかについて,有限要素法を用いて変位および応力の発現変化を解析し,外傷の損傷様式を探求する目的で研究を行なった。その結果,
1.下顎乳中切歯の外傷は,歯根完成期から歯根吸収1/3期までは,乳歯の脱臼および後継永久歯の歯冠部への影響が発現する。
2.歯根吸収1/3期から歯根完全吸収期では,歯槽骨骨折を伴う乳歯の脱落および後継永久歯の歯根部への影響や萌出障害が発生しやすくなると考える。
乳歯の外傷は,受傷時から後継永久歯の形成および萌出まで経過観察することが必要であると思われる。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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