小児歯科学雑誌
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乳歯歯根膜における毛細リンパ管の分布ならびにその構造について
塚本 暁子
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キーワード: 乳歯, 歯根膜, 毛細リンパ管
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1998 年 36 巻 5 号 p. 804-817

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抄録

生後2~6か月の雑種幼犬31頭を用いて,生理的な歯根吸収が認められる乳歯と歯根未吸収の乳歯における歯根膜リンパ管の構造ならびに分布状態について検索した。
研究は,ペントバルビタールによる腹腔麻酔下で,総頸動脈より潟血し,0.8~0.9%加墨汁硝酸銀水溶液ならびに墨汁溶液を注入する方法で行った。その後,4%パラフォルムアルデヒドにて浸漬固定を行い,上下顎骨を分離し,マイクロラジオグラムを撮影し,歯根の位置と吸収を確認した。さらにPlank-Rychlo脱灰液で脱灰後,上下顎骨を20ブロックに分割した。脱灰終了後,パラフィンにて包埋した。試料は40~50μm厚で頬舌側断で連続切片を作製し,紫外線に暴露した。
その結果,歯根膜のリンパ管の走行は,歯根の吸収に拘わらず,歯頸側では歯軸に沿って歯槽骨寄りを走り,根尖側では,網状に分布していた。分岐した枝は,歯槽骨中のフォルクマン管を経て,骨髄のリンパ管と交通していた。歯根膜のリンパ管は,大多数が血管と伴行していた。リンパ管の分布数は,近心側より遠心側が,前方乳臼歯より後方乳臼歯が,頬側より舌側がそれぞれ多かった。生理的歯根吸収部位では,吸収窩に血管網が形成され,この血管網の周囲に近接して,リンパ管が存在している部位が多数認められた。以上のことから,リンパ管の進行ならびに分布は,根尖病巣の進行や根管治療の予後を左右する重要な因子であることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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