抄録
スポーツにおいて「薬物は許されるのか」という問題は, 倫理や健康上の問題のみならず, 「ドーピングをしてまで勝たねばならない近代競技スポーツの論理とは何か」「自然な人間とは何か」「身体とは何か」「社会とは何か」という問題につながるだろう。ドーピングは結果として従来の身体観やスポーツ観を粉砕する行為である。この人類史上最大の難問ともいわれる問題を軸に, スポーツの本質や存在理由, それを行なう主体の崩壊や身体の希薄化など, 今後のスポーツや人間のあり方を模索するうえで緊要な事柄について討論したい。