主催: 一般社団法人 日本体育学会
会議名: 日本体育学会第70回大会
開催地: 慶應義塾大学日吉キャンパス
開催日: 2019/09/10 - 2019/09/12
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慶應義塾における体育・スポーツの在り方を考える時、「獣身を成して後に人心を養え」等の言葉で知られる福澤諭吉と「練習は不可能を可能にす」の言葉を遺した小泉信三を欠くことは出来ない。
福澤は、日本の文明化に不可欠なものとして科学的精神と独立心を挙げ、慶應義塾の教育においては、科学的精神を育む為のカリキュラムを重視し、独立心を育む為に学年や立場を越えて互いに尊重し合う人間関係を大切にした。そして、個人の独立を支える要素として身体の健康を挙げ、体育や運動を重視した。しかし一方で学生がむやみに遊戯性にふけることや勝敗へ固執することがもたらす負の側面も早い時期に指摘している。
小泉は、福澤の教育観を引き継ぎつつ、スポーツの教育的な価値を高く評価し、庭球部長時代、塾長時代、そしてそれ以降に至っても一貫して学生スポーツの強力な擁護者として知られた。
従来、二人の体育観・スポーツ観の関係性・連続性は深く探求されることがなく、それぞれ別個に捉えられていた観があるが、演者は福澤の体育観が小泉らに引き継がれ発展していった過程を論考したい。このことは、近年、様々な問題が露呈している日本の体育・学生スポーツの在り方を考える上でも意義があると思われる。