日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
Online ISSN : 2436-7257
第71回(2021)
セッションID: 2O1201-03-01
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学校保健体育研究部会【課題B】口頭発表
ジェンダー平等の実現を目指す体育授業の在り方に関する一考察
コーフボール実践を通しての体育への苦手意識の変容に着目して
*加藤 凌佐藤 善人
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抄録

我が国の体育授業は、1989年より、かつて男女間に存在したカリキュラム上の違いは無くなり、平等に学習の機会が担保されている。しかし、現在、スポーツから離れる女性の数は男性と比べて多い。この問題は様々な原因から生じていると思われるが、男子に比べ女子の運動・体育嫌いの割合が高いことは看過できない点である。つまり、体育授業におけるジェンダー平等は、形式的には担保されていても、実質的には実現されていないと考えられる。

 運動・体育嫌いは様々な要因から生起するが、特に女子は男子と比べて、劣等感や羞恥心から運動・体育嫌いになる傾向を有すると指摘されている。また、体育への苦手意識の中でも、回避感情と劣等感感情は女子の方が抱きやすく、性差が存在している。

 この性差を解消していくためには、指導の中で必要な「配慮」をすることが重要である。しかし、その種目固有の攻防のバランスを考慮することなく、いたずらにルールを改変した実践もある。

 本研究は、 IOC承認国際競技連盟連合に加盟している競技の中で、唯一の男女混合で行うチームスポーツであるコーフボールに注目した。そして、小学校5年生を対象に実践を行い、その前後で体育への苦手意識の変容を分析することを通して、コーフボールが体育授業におけるジェンダー平等の実現に貢献するボールゲームとなりうるのかを検討することを目的とした。

 その結果、実践前後において児童全体と女子の回避感情が有意に低下し(p<.05)、回避感情と劣等感感情と嫌悪感情の性差が解消傾向にあった。このような結果となった要因には、本研究におけるコーフボールが男女共にゲームに参加しやすいボールゲームであったことが考えられる。

 ここから、コーフボールは、体育への苦手意識の性差を解消させることができるボールゲームの一つだと示唆され、体育授業におけるジェンダー平等の実現のために貢献する可能性が示された。

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