日本静脈経腸栄養学会雑誌
Online ISSN : 2189-017x
Print ISSN : 2189-0161
特集
在宅静脈・経腸栄養を必要とする腸管不全症例における漢方薬の役割
上原 秀一郎田附 裕子山中 宏晃上野 豪久有光 潤介小川 恵子奥山 宏臣
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 32 巻 2 号 p. 960-963

詳細
抄録

腸管不全症例において不安定な経口摂取や経腸栄養管理に漢方薬が有効であった自験例を報告し、漢方薬の臨床栄養への貢献を考察する。人参湯は腸管不全7例に、また五苓散は難治性下痢2例に投与した。人参湯の効果について、投与前と3ヶ月継続服用後の腹部症状についてVisual analogue scale(VAS)や症状の変化で評価したところ、7例中6例で腹部膨満と腹痛の改善が認められた。また下痢についても同様であった。人参湯の投与中、経腸栄養の中断はなく、腹部レントゲン像で腸管拡張の改善が認められた。また吸収不良による水様性下痢の症例に対しては、五苓散投与により2例中2例で便性の改善が得られ、血清アルブミン値も改善した。在宅静脈・経腸栄養を必要とする腸管不全症例について、西洋医学のみで管理することが困難な栄養管理上の問題に対して漢方薬が有効なこともあり、Quality of Lifeの上昇に寄与するものと考えられた。

著者関連情報
© 2017 日本静脈経腸栄養学会
前の記事 次の記事
feedback
Top