日本静脈経腸栄養学会雑誌
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糞便移植法の現状と将来展望
石川 大野村 慧永原 章仁
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2018 年 33 巻 5 号 p. 1121-1126

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抄録

腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)と様々な疾患との関連が明らかになってきており,腸内環境の改善を目的とした便移植療法(fecal microbiota transplantation; 以下,FMTと略)に世界各地で注目が集まっている.本邦においても,近年増加している潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; 以下,UCと略)患者への新しい治療選択肢として期待が高まっている状況である.FMTは難治性Clostridium difficile感染性腸炎(Clostridium difficile infection; 以下,CDIと略)に対して高い治療効果を示し,欧米では既に実用化されているが,他疾患に対する治療効果については不明瞭であり,現在も数多くの研究が行われている.2017年2月に報告されたランダム化比較試験(randomized controlled trial; 以下,RCTと略)でUCに対するFMTの有効性が証明されたが,凍結ドナー便を40回以上自己浣腸する方法であり,治療手技の煩雑さや不確実性を考慮すると,現実的な治療選択肢になりうるかは疑問が残る.我々も,UCに対して抗菌剤療法をFMT前に行い,大腸内視鏡下で新鮮便を投与する抗菌剤併用療法(Antibiotics-FMT; 以下,A-FMTと略)について報告してきた.特にUCについてはドナー便の選択,投与法など様々な手法が試されているが,未だ標準化されておらず,疾患に応じた安全で有効,かつ効率的なFMTプロトコールの確立が望まれている.

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© 2018 日本静脈経腸栄養学会
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