抄録
1) 下肢筋群の活動の敏捷性の一つの指標として, 一定距離を飛びのく逃避動作の反応時間を測り, 上肢の敏捷性と比較した。
2) 二つの押し板 (圧変化で電路が開閉される) を用い, 合図によって手を一の板から一定距離の他方の板へ移す動作の反応時間を測ると動作開始時間は単純反応時に近く, 年令との相関は高くない。他方の板を押すまでの時間は中高年になると多少遅くなる傾向を示す。
3) 手の移動の反応時は繰り返し測った場合に動作開始の反応時も, 動作終了の時間もそのばらつきは単純反応時のそれに近いが, 両者の差, すなわち手を移動させる時間のばらつきは小さい。
4) 右方一歩横飛びにおいて, まず片足を動かし, ついで他足を動かす場合は動作開始の反応時は単純反応時より長く, 両足揃えて横に飛ぶ場合のそれより長い。年令, 性別にみると, 動作開始, 動作終了の反応時ともに高年令になるに従って遅くなり, また女子が男子より遅い。この関係は両足揃えて飛ぶ場合より, はじめ片足を移動させる場合の方が明瞭になる。
飛びのき反応時を繰り返し測つたものを時間の度数分布曲線で示すと, ほぼ正規分布に近い形を示す。手の移動の反応時と飛びのきの反応時との間の相関はあまり高くない。
5) 右方一歩飛びの着地の位置のずれは横飛び動作の時間の長短とは関係がない。しかし, 位置のずれのばらつきと反応時のばらつきとは極めて高い相関 (r=+0.96) を示す。
6) 左方一歩飛びの反応時は右方一歩飛びのそれと大差なく, 前飛びは両足を揃えて飛ぶ場合を除いてはじめの踏み板に体重が残る時間が長い。後方飛びは横飛びと大差ない。
7) 二歩飛びのきの年令的差違は一歩飛びのきのそれに近い。
8) 以上より, 下肢筋群の活動の敏捷性の指標として一歩横飛びを利用できることが示され, また, 実用的には第二の踏み板を片足が踏むまでの時間を測ることが有用である。
この報告は文部省科学研究費による総合研究日本人の体力づくりの環境生理学的研究 (研究班長白井伊三郎教授) の分担研究としておこなったものである。