体力科学
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リユージュ・ボブスレー選手のG耐性と体力に関する研究
高野 敏雄
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1971 年 20 巻 2 号 p. 101-117

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抄録

冬期スポーツの1種であるリュージュ及びボブスレーは, わが国では歴史が浅く, また非常な危険を伴なう競技であるに拘らず, スポーツ医学的検討が行なわれていない。特に氷壁で囲まれた急カーブのコースを高速で滑降する際に生ずる遠心力が競技者に及ぼす影響は極めて重大な問題である。著者は今回両競技の選手あわせて48名 (うち女子4名) につき, 遠心力負荷実験, 体格・体力などの測定を実施して, 安全確保のための検討を加えた。おもな研究成果は次のとおりである。
1) 人体用遠心力発生装置を用いてgrayoutを指慓とした+Gz耐性閾値を決定した。リュージュ選手は+5.67Gz (Range-4.0~6.1, SD=0.56) , ボブスレー選手は+5.80Gz (Range=4.7~6.1, SD=0.43) であって, +Gz負荷に伴なう血圧, 心拍数上昇も適正な生理的反応を示した。
2) 自転車エルゴメータによる最大仕事量および最大心拍数は, 運動鍛練者として適正な値を示した。
3) 軽い+Gz負荷中のCoriolis刺激によって, 約30%の被検者に操縦桿操作performanceの低下を示すものが認められた。
4) 両競技の安全を確保するためには, 各選手は適正なG耐性とG負荷に対する生理的な適応反応を示すことが必要であり, また競技中のCoriols刺激による異常空間識を誘発しないよう訓練を行なう必要がある。このためには遠心力発生装置などによりG負荷の体験をさせることが望ましい。

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